サッカーW杯をザックジャパンの集大成に


 4年に1度のサッカーの祭典ワールドカップ(W杯)ブラジル大会が12日(日本時間13日)から開幕する。各大陸予選を勝ち抜いたチームに開催国ブラジルを加えた32チームが世界一を目指して約1カ月間、熱戦を繰り広げる。

 日本の特徴は組織力

 日本代表は、初出場の1998年フランス大会から5大会連続出場となる。かつてはW杯出場が目標だったが、いまや大会常連国になりつつあることに感慨深い人も多いだろう。

 イタリア人のザッケローニ監督が率いる日本代表は、グループリーグでC組に入った。14日(同15日)にコートジボワールとの初戦を迎え、19日(同20日)にギリシャ、24日(同25日)にコロンビアと試合を行う。いずれも現時点で国際サッカー連盟(FIFA)ランキングが日本より上位で侮れないが、実力は拮抗しており、決勝トーナメント進出は十分可能だ。

 今回は代表選手23人のうち、海外のクラブチームに所属する「海外組」が過去最多の12人となった。マンチェスター・ユナイテッドやACミランなど世界屈指の名門クラブに所属する選手もいることから、過去最強メンバーとの声もある。

 今大会は、ザッケローニ監督が築き上げたパスワークを主体として主導権を握る攻撃的サッカーの集大成になる。これまでの日本は、2002年日韓大会と10年南アフリカ大会のベスト16が最高成績だ。日本の特徴であるスピードと組織力を結集し、ベスト16を上回る成績を期待したい。

 ブラジルには世界最大の日系人コミュニティーがあり、熱烈な応援は選手の支えにもなる。ブラジル人の多くも親日的で、昨年6月にブラジルで開かれたW杯の前哨戦とされるコンフェデレーションズ杯でも、現地の日系人とブラジル人の大きな声援があった。遠い異国の地に住む日系人の応援を背に、日本代表の誇りを持ってピッチで躍動する選手の姿を想像すると、いまから楽しみだ。

 一方、今回のW杯は、開催に反対して賃上げや福祉の充実などを政府に求めるデモがブラジル各地で多発し、サッカー以外の部分で注目を集めている。日本代表が公開練習を行ったソロカバでもデモが起こるなど、開幕直前になっても収まる気配を見せない。

 スタジアムの建設の遅れもたびたび指摘された。一部の競技場では、FIFAが強く求めていた全観客席を稼働させたテスト試合を行わずに本番を迎えることになりそうだ。

 また今年に入り、欧州リーグでアフリカ系選手への観客らの人種差別表現が問題となり、この対策も求められている。

 多くの人々が待ち望んだ大会が、事故や事件で悲劇に見舞われないよう、大会組織委員会には最善を尽くしてもらいたい。

 成長した南米の姿を

 平和の祭典であるW杯は、テレビ視聴者数で五輪を上回ると言われている世界最大のスポーツイベントだ。サッカー王国ブラジルでの開催は1950年以来、64年ぶり。大会の成功により、大きく成長する南米の姿を示してもらいたい。

(6月11日付社説)