公判積み重ね裁判員制度の検証を尽くせ


 裁判員制度がスタートして5年がたった。今世紀初頭から進めている政府の司法改革の目玉の一つでもある。法律に素人の裁判員が裁判官たちと評議しながら判断することができるか――という当初からあった疑問への明確な回答はいまだない。裁判員に精神的負担が重くのしかかることなどの事実を厳しく見据えるべきだ。

 手ごわい事案が多い

 この制度は2009年5月21日に施行された。最高裁が昨年実施した裁判員アンケートでは、裁判への参加について「いい経験だった」との回答が95%を超えた。理由としては「いろいろな人の意見を聞き、視野が広がった」「人生を深く考える機会になった」などが挙がった。

 一方、1月から2月にかけ、全国の20歳以上の計約2000人を対象に行った「裁判員制度の運用に関する意識調査」では、裁判員として裁判に参加したいかとの問いに「参加したくない」「あまり参加したくない」との回答が合わせて85・2%に上り、過去最高となった。

 今年3月退官した竹崎博允最高裁長官は「(同制度が)国民の理解と協力のおかげで順調に運営されている」と評価。一方で「法曹三者は裁判員がどこに問題を感じているかの理解が十分ではなかった」と指摘し、「裁判員の問題意識に応えていく審理、評議を実現していくべきだ」と課題を述べた。

 そもそも、一般国民にとっては手ごわい事案が多い。この1年間で、裁判員裁判の死刑判決がプロの裁判官だけで審理する二審で覆され、無期懲役に減刑されるケースが3件相次いだ。二審は裁判員判決を重んじる傾向にある一方、「死刑判断は先例を尊重すべきだ」との指摘もあり、評価が難しい面がある。

 初の破棄となった東京の定食店店主殺害事件で裁判員を務めた女性は、二審判決後に「破棄されたのはショック。(審理、評議を行った)あの約3週間は何だったのか」と話した。

 審議への参加は精神的タフさも要求される。昨年、裁判員として被害者の遺体写真を見るなどした福島県の女性が「急性ストレス障害(ASD)」と診断され、国に損害賠償を求める訴訟を起こしている。白黒写真やイラストにするなどの工夫が必要だが、裁判員にとっては相当負担が重く、この女性が特別ではないだろう。アフターケアをどう充実させるべきか、早急に解決すべき問題だ。

 一方、これまで裁判員の負う義務や罰則が強調されてきた。中でも守秘義務について、裁判員はそれが終生続く。それにもかかわらず、当該事件について法廷外でどこまで議論したり情報を伝達したりできるのか、その基準が不明確だ。これでは、裁判員が被告人やその関係者から恨まれたり、危害を加えられたりする恐れさえある。

 指導力必要な法曹人

 裁判員制度は、弁護士らが経済事犯に巻き込まれる事件や裁判官の不祥事が相次ぎ、司法の信頼が地に落ちたため、司法の透明性を高めるために導入された。国民の積極的な参加とともに、法曹人の自覚、法による正義実現へ向けた職業倫理の向上も問われている。

(6月1日付社説)