シー・シェパードの独善的行動を野放しにするな


 米国の反捕鯨団体シー・シェパード(SS)は、妨害船「ボブ・バーカー」号が南極海で日本の調査捕鯨船「第2勇新丸」などから「攻撃を受け、衝突した」と発表した。

 SSの妨害船は2010年にも、日本の調査船と衝突し沈没する事故を起こしている。今回も衝突を誘発し、責任は調査船にあると一方的に訴える立場とみられる。生物保護が理由の独善的な行動を野放しにしてはならない。

 国際条約が認める活動

 日本の調査捕鯨に対しては、反捕鯨国などから「国際捕鯨委員会(IWC)による商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)に反する」との批判がある。オーストラリアは10年5月、日本に調査捕鯨をやめさせるため、国際司法裁判所に提訴した。

 だが、調査捕鯨は国際捕鯨取締条約で認められている正当な活動だ。資源量の豊かなミンククジラを対象に行われており、得られたデータは資源管理に役立っている。

 また捕鯨に反対することは自由であっても、SSのような暴力は決して許されない。SSはこれまでも調査船のスクリューにロープを絡ませるなどの妨害行為を繰り返してきた。調査船に酪酸入りのガラス瓶を投げ付けたこともある。

 10年に妨害船が調査船と衝突した際の衝撃は、死者が出てもおかしくないほどのものだったという。調査船乗組員の命を危険にさらすことがあってはならない。

 米連邦高裁は一昨年12月、SSに対し調査捕鯨船団への妨害行為を差し止める仮処分命令を出したほか、昨年2月にはSSを「海賊」と認定した。

 SSはこれを無視して活動を続けており、日本政府は実効性のある対策を講じる必要がある。海賊対処法の適用などを検討すべきだ。

 本拠地のある米国や妨害船の船籍国である豪州、オランダの協力も欠かせない。いずれも反捕鯨国だが、11年7月のIWC年次総会ではSSによる妨害活動阻止に向けた決議を、この3カ国を含む全会一致で採択している。対策を強化してほしい。

 こうした妨害活動は論外としても、日本の調査捕鯨やイルカ漁に対して海外で根強い反発があるのは確かだ。ケネディ駐日米大使は先月、ツイッターに「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」と書き込んだ。

 和歌山県太地町のイルカ漁は、09年に公開された米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」で批判的に描かれたほか、SSのメンバーが漁の期間中に常駐して監視している。

 鯨食文化の情報発信を

 文化の違いを乗り越えて相互理解を深めるのは簡単ではないが、日本の立場をきちんと説明することは必要だ。ケネディ大使の書き込みに対し、安倍晋三首相は「それぞれの国、地域には、生き方や慣習、文化など祖先から伝わるものがある。そうしたものは尊重されるべきだ」と述べた。政府は今後も日本の鯨食文化について情報発信を続けていくべきだ。

(2月3日付社説)