沖縄復帰45年、増している戦略的重要性


 きょうで沖縄県の本土復帰から45年になる。第2次世界大戦で激しい地上戦が展開され、日米合わせて20万人の犠牲者を出した沖縄は、戦後27年間の米国統治を経て日本に返還された。

 沖縄の苦難に思いをはせるとともに、中国や北朝鮮の脅威増大で沖縄の戦略的重要性が増していることにも目を向ける必要がある。

 辺野古埋め立て始まる

 沖縄県では4月、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古で埋め立て工事が始まった。1996年4月に日米両政府が普天間返還で合意して以来、埋め立て工事は初めてであり、移設に向けた大きな節目と言える。

 辺野古移設をめぐっては昨年12月、仲井真弘多前知事による埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事が是正指示に従わないのは違法として、国が知事を相手に起こした訴訟の上告審判決で、最高裁は知事側の上告を棄却。「仲井真前知事が埋め立てを承認した判断に違法はない」と結論付けた。

 普天間飛行場の周辺には学校や民家が密集しており、危険極まりない。万一事故が起きて大惨事になれば、日米同盟に致命的な打撃を与えることになりかねない。最高裁は「普天間飛行場の危険性除去が喫緊の課題であることを前提に、県内の基地面積が相当縮小されることなどを考慮して埋め立てを承認した前知事の判断は明らかに妥当性を欠くものではない」と指摘している。

 沖縄における大きな課題は、米軍の抑止力維持と基地負担軽減のバランスをいかに取るかである。辺野古移設はこの二つを両立させる「唯一の解決策」だ。

 辺野古移設に反対する翁長氏は、埋め立て工事開始を受けて「県が有するあらゆる手法を用い、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に取り組む」と述べた。不毛な争いをいつまで続けるつもりなのか。

 沖縄県には全国の米軍専用施設の約70%が集中しており、基地負担が重いのは事実だ。しかし県民に理解してほしいのは、沖縄の地政学的重要性ならびに国際情勢の厳しさである。

 沖縄県の米軍基地は、核・ミサイル開発を進める北朝鮮や海洋進出を強める中国の脅威に対処するために不可欠だ。特に、中国が一方的に領有権を主張する尖閣諸島は沖縄県に所属している。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間配備によって、尖閣諸島や台湾、中国沿岸部にも完全武装の海兵隊員を送り込む作戦が可能になった。

 政府も南西諸島の防衛体制強化を目指している。今年1月の沖縄県宮古島市長選では、陸上自衛隊の受け入れを表明した現職の下地敏彦氏が勝利した。米軍との連携で抑止力の向上に努める必要がある。

 一層の基地負担軽減を

 一方、沖縄県の北部訓練場の過半に当たる約4000㌶が昨年12月、日本に返還された。この返還面積は、沖縄県の本土復帰後、最大規模となる。普天間の返還に向け、辺野古での工事も着実に進める必要がある。日米両政府は抑止力を損なわない範囲で、沖縄県の一層の基地負担軽減を実現すべきだ。