最後まで心通わせる旅


両陛下、列車で手振り続け

 天皇、皇后両陛下は伊勢神宮参拝に伴う三重県訪問を終え、19日帰京された。在位中最後の地方訪問とあって沿道や駅頭、沿線で大勢の人々が迎えた。両陛下は移動時の列車でも立って手を振り続け、人々と最後まで心を通わせた。

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天皇、皇后両陛下は近鉄賢島駅に集まった人たちに手を振られた=19日午前、三重県志摩市(代表撮影)

 18日の伊勢神宮参拝は退位の報告が目的で、5年ぶりに剣と璽(じ)=勾玉(まがたま)=が皇居から運ばれた。陛下は真剣な表情で儀式に臨み、皇后陛下は内宮の正殿に至る急な階段を、護衛官の腕につかまりながら上られた。

 伊勢神宮祭主で長女の黒田清子さんが見守る中、外宮に続き内宮で退位を御報告。儀式を終えた両陛下について、側近は「感慨深い様子で、ほっとされたのでは」と話す。

 両陛下はその後、近鉄特急で賢島へ。「人がいたらちゃんと教えてください」と話す両陛下に、侍従が「右にいます」「左にいます」と伝え、皇后陛下は白い手袋を持ったまま手を振った。

 18日夜、滞在先の賢島のホテルにはこの日50歳の誕生日を迎えた黒田さんが訪問。伊勢神宮関係者も交え夕食を共にした。

 在位中の30年余りで被災地訪問や「慰霊の旅」も含め、全国をくまなく回られた両陛下。賢島駅でも「ありがとうございます」と人々から感謝の声が上がり、笑顔で応えられた。帰りの特急でも左右の座席に移動して沿線の人々に手を振り続け、在位中最後の旅を終えられた。