天皇陛下、80歳になられる「日々感謝、幸せなこと」


天皇陛下

天皇陛下は80歳の誕生日記者会見で質問に答えられた=18日、皇居・宮殿「石橋の間」(代表撮影)

  天皇陛下は23日、80歳の誕生日を迎えられた。これに先立ち皇居・宮殿で記者会見し、「これまでに日本を支え、今も各地で様々に我が国の向上、発展に尽くしている人々に日々感謝の気持ちを持って過ごせることを幸せなことと思っています」と述べられた。

 この80年で最も印象に残っていることとして「先の戦争」を挙げ、多くの犠牲者が出たことを「本当に痛ましい限りです」と振り返られた。一方で戦後の復興に努力した人々に感謝の意を示された。

 天皇の立場を「孤独とも思えるもの」とされた上で、結婚により「私が大切にしたいと思うものを共に大切に思ってくれる伴侶を得ました」と言及。皇后陛下に対し「常に私の立場を尊重しつつ寄り添ってくれたことに安らぎを覚え、これまで天皇の役割を果たそうと努力できた」と感謝の言葉を述べられた。今後の人生について「年齢による制約を受け入れつつ、できる限り役割を果たしていきたい」と語られた。

 五輪招致活動などで論議を呼んだ皇室の活動と政治の関わりについては、「天皇は国政に関する権能を有しない」とする憲法の条文を挙げ、「この条項を遵守(じゅんしゅ)することを念頭において、私は天皇としての活動を律しています」と述べられた。判断が難しい場合には宮内庁長官らの意見を聞いていると明かされた。

 公務の負担軽減については昨年の記者会見と同様「今のところしばらくはこのままでいきたい」と述べ、否定的な見解を示された。

にじむ公務への強い御決意

 天皇陛下はこの1年も、被災地お見舞いやインド公式訪問など、忙しい日々を送られた。周囲が体調を気遣う中、公務について「しばらくはこのままでいきたい」と今年も明言された。穏やかな口調の中に、80歳になってもなお、国民とともに歩む象徴天皇として、できる限りの務めを果たされようとする強い御決意がにじんでいた。

 80年で最も印象に残っている出来事として、多くの国民が犠牲者になった「先の戦争」を挙げ、人の絆を大切にして東日本大震災に対処した人々の姿を「心強く思っています」と語られた陛下。国民に寄り添いながら公務を続けられてきたお姿が浮かび上がる。

 昨年2月の心臓手術は、今後も自らの務めに意欲的に取り組みたいとの陛下の御意向に沿った「積極的な医療」だった。「非常に数が多い」(秋篠宮さま)と周囲が懸念する中、現在は手術前と同じペースで公務を続けられている。

 陛下はまた、五輪招致など皇室と政治の関わりが議論になったことをめぐり、天皇は国政に関する権能を有しないと定めた憲法を遵守する考えを改めて強調された。一方で、皇室の活動が国政に関するのかどうか判断が難しい場合もあると明かされた。

 国事行為でも私的行為でもない天皇の公的行為の範囲があいまいであることは、以前から問題となっている。時の政府の解釈により、公的行為が際限なく拡大すれば、天皇の政治利用につながる恐れがあるからだ。陛下の御発言を真摯(しんし)に受け止める必要がある。