医学部入試不正、受験生に対する裏切りだ


 昭和大が医学部入試の2次試験の調査書評価で現役と1浪の受験生に加点していたことが分かった。また、一般入試の2期試験で、辞退者が出た場合に備えて設定した合格者枠に昭和大OBの子供を優先的に入れていた。受験生に対する裏切りだと言わざるを得ない。

現役や1浪受験生に加点

 このような不正は、東京医科大の問題を受け、文部科学省が実施した調査で指摘された。東京医科大では男子受験生や現役生らに加点するなど得点を操作し、女子や浪人回数の多い受験生の合格者数を抑制していた。

 東京医科大は文科省の私立大支援事業をめぐって、便宜を図ってもらう見返りに文科省前局長の佐野太被告(受託収賄罪で起訴)の息子を不正合格させていた。息子は10点を加算され、一次試験に合格していた。

 一方、昭和大では現役生らへの加点とOBの子供に対する優遇措置を6年前から実施していたが、募集要項に記載はなかった。調査書評価では現役生に10点、1浪の受験生には5点をそれぞれ加えていたという。

 不正な入試は順天堂大などでも行われていた疑いが浮上している。必死に勉強している受験生の努力を踏みにじるものであり、到底許されないことだ。

 昭和大の小川良雄医学部長は「現役や1浪の受験生は、より優れた医学生になると経験しているので、将来性も高いと考えた」という。だが、それを裏付けるデータは示していない。

 OBの子供については「本学の精神が親から伝わっている。確実に入学し、いい医療人になってくれる可能性が高い」と語った。だからといって、公平性が求められる入試で有利に扱っていい理由にはならない。

 昭和大は当初、文科省の調査に対して差別を否定していた。小川氏は「文科省から指摘を受けて、初めて不適切だと認識した」と述べている。不正の認識が薄いことも理解に苦しむ。

 小出良平学長は「学力だけでなく、総合評価したいと思ってやっていた」という。だが、現役生や1浪の受験生に一律に加算する得点操作が「総合評価」とはとても思えない。一般常識と懸け離れた見解にあきれるばかりだ。

 柴山昌彦文科相は「不適切な操作はないとの回答を得ていたにもかかわらず、このような事態に至ったことは大変遺憾だ」と述べた。昭和大は不利益を被った受験生への救済措置を早急に講じるべきだ。

 文科省は東京医科大に続き、昭和大についても私学助成金の減額を検討する方針だが、当然だと言えよう。昭和大には昨年度、全国の私立大で7番目に高い約54億6000万円が支給されていた。

 私大医学部の入試は出題傾向が大きく異なるため、昭和大を目指していた受験生が今から志望校を変えるのは困難だ。受験生の間で混乱が生じることが懸念されている。

信頼回復へ徹底調査を

 昭和大は今回の不正について第三者委員会を設置して調査する考えだ。

 原因究明と再発防止を徹底しなければ受験生の信頼は回復できない。