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数学の公式を疑った高校生


 最近、知人から高輝度青色LEDの開発によってノーベル物理学賞を受賞した中村修二カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の高校時代の話を聞いた。

 四国・愛媛の大洲高校出身の知人は中村教授と同学年で、文系と理系の違いはあるが当時のことをよく知っていた。中村氏は典型的な理系の生徒で、好きな数学と物理の点数は良かったものの、暗記物は苦手で、総合得点ではいつもクラスの下位の方だったそうだ。

 好きな数学でも、試験中は公式を導き出してから問題を解いていたので、時間不足になることが多ったという。なぜそうするのかというと、「公式でも間違ごうとるかもしれん」と言ったとか。他人が発表した知識を、「自分で検証すらしないで、結果だけを安易に利用しようという魂胆では、新しいものは産み出せない」というのだ。

 高校3年の秋まで部活を続け、大学入試にもあまり関心がなかったが、大学に行くと好きな学科を好きなだけ勉強できるぞと言われて、暗記科目も勉強して徳島大学に入ったものの、授業に数回出たら“騙(だま)された”ことが分かって、下宿にこもって数学や物理から始まって手当たり次第に本を読んで独学。専門課程を学ぶ3年に進んでから本格的に授業を受け始めた。

 好きなことに没頭し、自分の手と頭を使って築き上げたものしか信じないという姿勢はその後も一貫していて、それが大企業とは比較にならない劣悪な環境の中、文字通り独力で高輝度青色LEDを開発できた原動力となったようだ。

 中村教授はさまざまな著書で、①大学入試を過去問の記憶が役立たない自由記述式にする②大学の教養科目を高校で学び大学1年から専門科目を学ぶ③数学の教科書は数学が身近な事例や現象を分かりやすく表現できる道具であることを紹介する――などと提案している。生きざまと一貫していて面白い。(武)