世界日報 Web版

危機の部活


 読書の秋、食欲の秋など、秋を修飾する言葉はいろいろある。筆者にとってはスポーツの秋で、部活動に明け暮れた学生時代を思い出す。その部活が今、存亡の危機に瀕(ひん)している。少子化で入部する生徒が減っていることや、顧問の教師の過重労働など理由は複数あり、“ブラック部活動”という言葉も生まれている。土日の長時間練習など、生徒にも教師にも重い負担になっているのだ。

 先日、現役時代に五輪メダリストになるなど、元柔道選手を取材する機会があったが、その選手の母校(中学)の柔道部は廃部となってしまったという。格闘技の場合、競技経験のない教師が顧問になった場合、生徒がケガをする危険もある。

 筆者の中学時代は実に牧歌的だった。夏は部活の後、学校そばにあった冷たい湧水で喉を潤した。秋には、部員全員で自転車を連ねて、稲刈り最中の田んぼを眺めながら他校に練習試合に行った。部活で使う用具を購入するために、ドジョウ捕りをやったこともある。すべては懐かしい思い出だが、今なら生徒に何かあったらどうするのか、とすぐに中止になりそうなことばかりである。

 放課後の居場所になる、あるいは先輩後輩という縦の人間関係を学ぶ場になるなど、部活の教育効果は今も変わらず多い。その一方で、私立の中高校の場合、学校の宣伝効果を狙って大会で良い成績を残すことが優先され、そのことによるさまざまな弊害も生まれている。

 部活動を廃止して、競技をやりたい生徒は地域のスポーツ教室に通えばいいとの意見が出ている。確かに、今は地域にさまざまなスポーツクラブがあり、訓練を受けた指導員による適切な指導が期待できるから、それも選択肢の一つであろう。しかし、地域格差や家庭の経済事情で、子供はスポーツを行う機会が奪われる懸念がある。部活には長短両方あるが、部活を楽しんだ筆者には、まだメリットが勝っているように感じるのだが…。(森)

PAGE
TOP