曖昧な待機児童の定義


 9月早々、厚生労働省が潜在的待機児童6万7354人と言う集計結果を公表した。これは育児休暇中や認可など特定の保育所を希望する場合など、自治体の判断で待機児童にカウントしてこなかった数で、潜在的な保育需要を示している。

 この一週間後、東京都の小池知事は2歳児以下の小規模保育所施設の年齢制限を撤廃し、3歳児以上も可とする設置基準の緩和を国に要請、待機児童解消策を打ち出した。政府も都の要請を受け入れる方向だ。

 しかし、小規模保育所は基本的に園庭がない。かねてから子供の心身の成長を損ねると、質への懸念は強い。3歳児となると、自由な遊び環境が子供の発達上きわめて重要である。

 先月、ベネッセ教育総合研究所が公表した「園での経験と幼児の成長に関する調査」によれば、幼児期に幼稚園や保育園などで“遊び込む経験”が多い子ほど、“学びに向かう力”が高くなるという結果が示された。自由に遊べる時間や場所、遊具など、遊びの環境が充実しているほど、先生が子供の主体的な遊びを尊重し受容的に関わっているほど、遊び込む経験が多くなる。それが「学びに向かう力」を高めていくと、まとめている。

 都区内では公園や緑の空き地が宅地や商業施設に変わり、子供が自由に遊べる環境が激減している。園庭がある保育園をつくろうとすると、待機児童ゼロを掲げる杉並区のように地域住民の反対を押し切り、公園を潰して保育園に転用する措置を取ることになる。

 厚労省は「保育ニーズ」の実態を反映できる待機児童の定義に見直す方針という。「保育ニーズ」というのは働きたい親のニーズであって、子供のニーズではない。潜在的保育ニーズは85万人とも言われ、曖昧な保育需要を待機児童として公表するのは、低コストの保育所増産に拍車を掛けるだけ。子供の目線で何が大切か、考えたい。(光)