依然低い教育への公的支出


 筆者が大学に入学した昭和51(1976)年、国立大の授業料は年間9万6000円だった。今から40年も前のことではあるが、現行の53万5800円と比べると文字通り、隔世の感がする。とはいえ、その前年まで4年間は3万6000円、その前の9年間はなんと1万2000円だったので、当時の在校生より少なくとも3倍近く授業料を払わされたことになる。

 私立大との格差是正を求める声が高まる中、国庫負担の軽減のため学生の負担を増やす方向に政府が動いたためだ。70年代以降の急激な値上げは徐々に鈍化し、2004年の国立大の法人化以降は、国が示す標準額はほぼ53万円台で推移している。

 さて、40年前と現在の学費を比べると、物価が違うので実際の負担感は数字上の6分の1弱までにはならないが、それでも当時、家庭教師のアルバイトを2カ月もすれば、前期分の学費は軽く稼げた。現在、前期分の学費捻出のためには半年間、毎月4万5000円貯(た)めなくてはならない。生活費等々のことを考えるとアルバイト漬けになる。私大生はいわずもがなだ。親としても毎月の生活費に加えて学費まで仕送りするとなると大変な負担だ。また、そこで奨学金に頼ると、数百万円の負債を抱えて卒業することになる。

 先日、経済協力開発機構(OECD)が公表した加盟各国の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出割合の調査結果によると、日本は3・2%と7年ぶりに最下位を免れたものの、比較可能な33カ国中32位にとどまった。大学など高等教育への支出を公費で負担している割合でも、日本は35%で韓国(32%)に次いで2番目に低いという。

 私立、国立の比較というレベルでなく、国立大や私立大の理念や役割を再検討するところから、学費や奨学金などの問題を根本的に解決する時が来ているのではないだろうか。(武)