生徒の規範意識を高めよう/いじめ防止法


 先の通常国会で成立した「いじめ防止対策推進法」が施行された。

 同法は、2011年に大津市で市立中学2年の男子生徒が自殺するなどいじめ問題が相次いだことを踏まえ、制定されたものだ。

 警察との連携も定める

 大津市の事件では、いじめ自殺を防げなかった学校や、それを監督する立場の教育委員会が責任逃れの態度に終始し、厳しい非難の的となった。

 同法は、児童・生徒がけがをするなど重大ないじめが起きた場合、学校が事実関係を調査し、その内容を、いじめを受けた児童・生徒とその保護者、地方自治体に報告する義務を負うとしている。

 また、男子生徒は暴力を加えられるだけでなく、校舎3階の窓から身を乗り出すような格好で「自殺の練習」をさせられるなど、極めて悪質ないじめを受けていた。同法では、学校が犯罪として扱う必要があると判断した時は、警察署と連携して対処。児童・生徒に重大な被害が及ぶ恐れがある場合は、直ちに警察署に通報し、援助を求めることを義務付けた。

 同法によって、学校でのいじめ対策として、複数の教職員や心理、福祉の専門家で構成する組織が設けられる。いじめに対応する上で、学校全体での情報共有は欠かせない。

 ただ、同法に関しては条文があいまいで、恣意的な解釈が生じるとの批判の声もある。同法では国や自治体、学校がいじめ防止対策を効果的に推進するための基本方針を作ることを規定しているが、解釈を明確にする必要がある。また、多くの業務を抱えている教職員がいじめ対策に力を入れられるように支援することも求められる。

 こうした法整備や基本方針策定とともに、いじめ防止に不可欠なのは生徒に対する規範教育だろう。

 政府の教育再生実行会議は3月、いじめ問題の本質的な解決のため、道徳を教科化して充実させることを盛り込んだ。生徒が世のため、人のために生きた偉人の生涯を学び、影響を受ければ、いじめの減少も期待できよう。

 また生徒の規範意識を高めるには、宗教教育が欠かせないとの意見もある。政府は、こうした声にも耳を傾けてほしい。

 最大の教職員組合である日教組は、道徳の教科化に反対している。「価値観の押し付け」になるというのがその理由だ。

 一方、日教組の「教師の倫理綱領」には「教師は労働者である」と規定されている。戦後、日教組が教育現場を支配するようになって、教職員の仕事は人間を育てる「聖職」から「労働」へと矮小化された。

 「労働者」ということは、子供の教育にベストを尽くすより、賃上げに関心があることを示している。こうした状況では「知識」は伝えられても「徳」を教えることは難しい。

道徳の教科化実現を

 教職員の側に利己的な風潮が蔓延し、道徳の教科化に前向きになれないのであれば一刻も早く正すべきである。

 政府は早期に道徳の教科化を実現してほしい。

(10月8日付社説)