「賀状見て新聞を見て小半日」(長蘆葉愁)。…


 「賀状見て新聞を見て小半日」(長蘆葉愁)。かつては正月気分がずっと続いていたものだが、ここ数年は正月に落ち着いて過ごすことがなくなった。当時は店もあまり開いていないので、家でテレビや新聞、年賀ハガキなどをじっくり見るというのが普通だったのである。

 しかし、最近は年ごとに年賀ハガキも減り(年賀メールは増えている)、同じような番組ばかりのテレビを漫然と見ていることにも飽きて、外へ出掛け静かな街の中を散策して過ごしている。昔は正月に街を歩いていると、真っ白な紙に墨を含ませた筆で文字を書くような気分になったことを覚えている。

 そんな風景に一年の始まりを実感したものだが、最近は正月早々から開いている店も多く、目的もなくただぶらぶらと歩いている人をよく見かける。どこか落ち着きがないあわただしさを感じてしまう。

 一つには、スマートフォンを操作している人が多いのもあるかもしれない。電車の中ではごく当たり前の光景になったが、街でも歩きながら操作している人がいる。

 操作中に交通事故などに遭う弊害が指摘されているが、それよりも現実と向き合っていない印象があるのが気になる。人と人の間に機械が挟まっているようなもどかしさを感じる。

 スマートフォンが便利なことは分かる。しかし、便利さだけを追求することの限界もある。今年は、自然に触れたりする機会を増やしたいものである。