パリのノートルダム大聖堂の炎上は、世界中に…


 パリのノートルダム大聖堂の炎上は、世界中に大きな衝撃を与えた。フランスのマクロン大統領は「5年以内に再建する」と宣言したが、フランスの有名企業を筆頭に日本政府を含む海外からも支援が表明されている。

 大聖堂はパリの代表的観光名所、世界遺産だが、何よりフランスのカトリック信仰の中心であり、象徴である。イエス・キリストの聖遺物「いばらの冠」などが無事運び出されたのは不幸中の幸いだった。

 しかしあれだけの激しい火災にもかかわらず、大聖堂の壁や天井も一部を除いて残っているのは、ゴシック建築の卓越性を示しているように思う。ゴシック聖堂の一番の特徴は、聖堂内に足を踏み入れた瞬間、天に昇っていくように感じる空間構成である。

 それを可能にしたのが、いわゆる尖塔アーチ、リブ・ヴォールト、そして外側から壁を支えるつっかえ棒のようなフライング・バットレス(飛梁(ひりょう))。これらによってノートルダムの骨格は保たれた。

 高い壁を彩るステンドグラスは、神の恩寵を色と光で表現するものだ。そのバラ窓も基本的には大丈夫だったようだ。その点では、取り返しのつかない被害ではない。

 それに比べると、昭和24年に起きた法隆寺金堂壁画の焼失や、高松塚古墳壁画のカビなどは、取り返しのつかない事故だった。日本の文化財は紙製のものや木造建築物など燃えやすいものばかりだ。保護対策に抜かりがないか、これを機に再検証してはどうだろう。