新たな防衛大綱では、宇宙やサイバー空間…


 新たな防衛大綱では、宇宙やサイバー空間、電磁波などの領域で領域横断的に作戦を展開できるようにするとしている。統合幕僚監部と内部部局に専門部署を設け、陸上自衛隊にも電磁波作戦部隊を置くという。

 電子戦では、相手のレーダーや通信を電磁波で使えなくする技術やその運用がポイントだ。電子戦の能力を向上させている中国やロシアに対抗するため、電子攻撃機の開発も目指す。

 電磁波の応用をめぐって、わが国は先の大戦で苦い経験がある。戦前、東北帝国大学(後の東北大学)で教鞭(きょうべん)を執った八木秀次氏が基礎理論を完成し、後に作り上げた「八木アンテナ」にまつわる話だ。

 日本では初め、その威力が無視されたが、米国で評価された。戦争中はドイツの戦闘機を迎撃するため、米国の戦闘機にこのアンテナが取り付けられ、敵に大いに恐れられた。

 1942年のシンガポール戦後、日本の情報将校が、英国のレーダー技師のノートの中に「八木アンテナ」という言葉を見つけて質(ただ)したところ、その存在が分かったという。このような失態は戦時中、軍部が民間の研究成果を軽視していたことに原因があった。

 一方、宇宙、サイバー、電磁波を使った電子戦について、政府にその重要性の認識はあるものの、研究開発に投じられる予算は総じて小規模だ。ならば大学や企業の研究成果に絶えず目配りし、その技術の芽をピックアップして活用することを忘れてはならぬ。