世界日報 Web版

作家の村上春樹さんが37年ぶりに国内で記者…


 作家の村上春樹さんが37年ぶりに国内で記者会見を行い、自身の原稿や書籍、レコードなどの資料を、母校の早稲田大に寄贈すると発表した。早大はこれらのコレクションをもとに村上文学の研究拠点を新設する方針という。内外のハルキストには朗報だ。

 有名作家の遺品や資料などは、その作家が世を去ってから遺族がゆかりの自治体などに寄贈するケースが多い。有名作家とはいえ、生前それも現役バリバリの時に寄贈を決めるというのは異例だ。

 これについて、村上さんは「生原稿や書簡、関連記事などがたまり、うちにも事務所にも置き切れないくらいになっている。僕は子供がいないので散逸すると困る」と説明している。とはいえ昔の文士気質を持った作家であれば、なかなか踏み切れないだろう。

 しかし、こうした事情以上に、国内外での村上文学の位置を客観的に見て、自身の資料もある意味、自分のものではなく、研究者やファンのものという判断を下したのではないか。

 「僕の作品を研究したい人々の役に立つならこれにまさる喜びはない」という言葉にそれが表れている。世界50カ国以上で翻訳・出版されている村上作品。世界中の、特に若者たちに熱心なファンがいる。

 村上さんの『職業としての小説家』(新潮文庫)を読むと、ここまで手の内を明かしていいのかと思うくらい、オープンな内容に驚く。今回の寄贈発表は、村上文学の持つフランクな語り口そのものとも言える。