幕内14回優勝を遂げ、日本相撲協会理事長を…


 幕内14回優勝を遂げ、日本相撲協会理事長を務めた元横綱北の湖(故人)と共に「輪湖時代」を築いた第54代横綱輪島大士(ひろし)の輪島博さんが死去した。70歳。大相撲史上ただ一人の学生出身横綱で、しこ名が本名というのも史上初だった。昭和を代表する名横綱の訃報で、また昭和が遠くなった。

 輪島と言えば「黄金の左」。金色のまわし姿で左下手投げを得意とした。相撲のうまさ、強さから「天才横綱」とも言われた。しばしば優勝を賭けた北の湖との対戦は、手に汗握る四つ相撲となった。ライバルであり、友人でもあった大関貴ノ花との対戦も忘れ難い。

 現役時代の輪島の体型に似ていると言われる横綱白鵬は、輪島の相撲から多くを学んだ。14回目の優勝を飾った平成22年の5月場所では、14日目から14回優勝の輪島に敬意を表し、黄金色の締め込みで土俵に上がって見事優勝を決めた。

 輪島と同じ石川県出身の現役の幕内力士には、遠藤と輝がいる。輝は輪島と同じ七尾市の出身。この2力士が、色合いは微妙に異なるが、黄金色のまわしを締めているのも偶然ではない。

 輝は実は輪島の遠縁に当たり、下の名前も輪島からもらって大士(たいし)とした。まわしの色はもちろん、輪島にあやかったものだ。

 一方、遠藤のまわしも輪島のような活躍をと後援会から贈られたものという。金色のまわしを締めた輪島の雄姿は、地元に限らず昭和の相撲ファンの目に今も焼き付いている。