新宿末広亭の正月二之席のトリを人間国宝の…


 新宿末広亭の正月二之席のトリを人間国宝の柳家小三治師匠がつとめるというので聞きに行った。その小三治師匠、枕で「きょうは皆さんに悲しいお知らせをしなければなりません」と切り出した。

 健康上のことかと一瞬緊張したが、実はその日、所持する普通自動車と大型自動二輪の免許証を新宿警察署に自主返納したというのである。高齢者による交通事故が多発しているため、警察庁は高齢者に運転免許証の自主返納を勧めている。

 現在78歳で高座に上がる小三治師匠、車の運転くらい別に問題はなさそうに見える。その師匠に返納を決意させたのは、群馬県前橋市で85歳の男が運転する車が、自転車で始業式に向かう途中の女子高校生2人をはね、2人とも重体となった事故らしい。

 男は「気が付いたら事故を起こしていた」と供述しているという。「これから将来のある高校生を」と小三治師匠、珍しく怒りをにじませていた。

 師匠の趣味はバイクで、ライダーとしても有名だった。「バ・イ・ク」という本も出している。リウマチを持病に抱え、運転に不安を覚えるようになったため、乗らなくなってからだいぶたつらしいが、それでも大型自動二輪の免許については「ちょっと思いの深いものがあるんです」と内心を吐露する。

 そんな気持ちも知らず、警察の係官の対応が極めて事務的だったと恨めし気にこぼしていた。警察には返納を決断した高齢者に対するリスペクトを忘れてほしくない。