安倍晋三首相が遂(つい)に「伝家の宝刀」を…


 安倍晋三首相が遂(つい)に「伝家の宝刀」を抜いて、28日衆院解散を発表した。野党は「加計隠し」「解散の大義」などを問題にするが、国会で大変な時間を費やしたその問題も含め、安倍内閣の信任不信任は国民に委ねられた。

 首相としては解散の時期をずっと探ってきたのだろう。森友そして加計問題と逆風が続いてきたが、民進党の山尾志桜里氏の離党問題などで微妙に風向きが変わった。

 安倍首相は、その変化を見逃さなかった。政治家が政策実現のため権力基盤を強固にしようとするのは当然であり、まさに常在戦場、突然の解散ではない。今しかないというのが政治通の見方である。

 中曽根康弘元首相はかつて「政界風見鶏」と言われた。これに対し、元首相は「『風見鶏』は足はちゃんと固定している。体は自由です。だから風の方向が分かる。風の方向が分からないで船を進めることはできない」と風を見ることの重要性を語っている。

 中曽根氏の時代は、自民党内の派閥領袖たちが起こす風がもっぱら問題だった。しかし今は、当時と比べ情報化が一層進み複雑化している。政界、マスメディア、そしてさまざまな情報にアクセスする有権者が起こす風を読み取らなければならない。

 錨(いかり)を揚げて船出しようとしている安倍首相だが、港を出てからが問題だ。選挙戦の大海原に船を進めてから、どんな風が吹くか予断を許さない。近くの海上では「希望の党」という新たな台風も発生した。