最近、「プロスポーツ選手の人生設計」と…


 最近、「プロスポーツ選手の人生設計」というテーマが話題に上るようになった。昔は「プレーが全て。引退後のことを考えるのはとんでもない」との通念があった。

 しかし、スポーツ選手の現役期間は、作家、画家、音楽家、芸能人といった人々と比べて短い。肉体を使うという特有の条件があるからだ。引退後は指導者になる道はあるが、ポストは限られる。

 だから人生設計が必要なのだが、なぜかスポーツ選手本人がこのことに言及することはタブーとされてきた。競技中心が自明のこととされていて、引退後の人生について発言することは許されなかった。

 一つのキッカケとなりかけたのは、1978年のドラフト会議前日、江川卓投手が巨人と契約した「江川問題」だった。だがこの時は、当時のスポーツジャーナリズムによって「これからプロ野球に進もうという一選手が、引退後の人生まで視野に入れて行動するのは許されない」と強く非難された。

 2006年にサッカーの中田英寿選手が引退する時には、「サッカーが全てではない」という趣旨の発言が、さほどの違和感なしに受け止められた。

 入団前の江川氏と、実績を残した上での中田氏のケースでは状況が違うが、受け止め方は逆になった。このころから、スポーツ選手の人生設計がやっと認められるようになった。選手についての考え方が、歴史の進行に対応して変化する事例を示したものであり、興味深い。