深夜に帰宅途中、神奈川県の私鉄駅で80歳は…


 深夜に帰宅途中、神奈川県の私鉄駅で80歳は超えていると思われる老女が何をするでもなくいるのを時々見掛ける。駅やその周辺を徘徊(はいかい)しているらしい。

 こんな夜遅くにと誰もが心配するが、駅員もどうしようもないようだ。1人暮らしなのか、家族はどうしているのかと不審に思っていたが、ある日の夜遅く、老女と同じくらいの年齢の男性とベンチで話しているのを見て、合点がいった。夫と思われるその男性も、認知症の妻の徘徊をどうすることもできないのだろう。

 公表された2016年国民生活基礎調査によると、75歳以上の要介護者のうち、介護する人も75歳以上というケースが30・2%となり、初めて3割を超えた。また介護が必要になった主な理由として認知症が18・0%を占め、初めて1位になった。

 実際、田舎に帰り近親者を訪ねてみると、老老介護の世帯となっていたというケースも稀(まれ)ではない。本人は介護の日常を普通に話すが、その困難さが伝わってくる。聞きながら、やがて自分もその立場に置かれる可能性は決して低くないと思う。

 要介護レベルが高くなった場合、老老介護の大変さを考えると施設に入るのが、最も現実的な選択だろう。しかし、そう考えない人もいる。また施設不足で、誰でもすぐに入れるわけではない。

 認知症予防が医学的にも社会的にも大きなテーマになっている。健康寿命の増進と介護支援態勢の充実の両面が急務である。