特定の刑事裁判に有権者が参加する裁判員制度…


 特定の刑事裁判に有権者が参加する裁判員制度が、2009年に施行されてから8年が過ぎた。鳴り物入りで始まった制度だが、ここにきて裁判員候補者の欠席率の高さが目立っている。

 最高裁によると、選任手続きに呼び出された候補者の出席率は、09年の制度開始時は83・9%だったが、16年は64・8%に落ち込んだ。約3人に1人が欠席したことになる。候補者になっても出てこない人が相次いでいるのだ。

 09年に3・4日だった平均審理予定日数は16年には6・1日に増えており、長引けば辞退率などが高くなる傾向がある。施行当初懸念されたことだが、裁判員の心理的な負担は相当なもので、日常生活に支障を来してまで参加しようという気になれないようだ。

 その上昨年5月には、殺人未遂罪に問われた特定危険指定暴力団工藤会系組幹部の裁判員裁判で、元暴力団員らが裁判員に声を掛け脅す事件が起きた。この事件で6人の裁判員のうち4人が辞任を申し立て解任が決定された。

 こういう脅しを許していては、市民は怖がって、ますます裁判所に来なくなり、制度が立ち行かなくなってしまう。裁判員の出入り口を一般の人と区別することや警察との連携を確認することなど、安全確保の徹底が必要だ。

 改正された裁判員法は付則で「施行3年後に、施行状況を検討して必要な措置を講じる」と定めている。裁判員裁判の対象事件について再考すべきではないか。