「で、あなたはどう考えているの?」と…


 「で、あなたはどう考えているの?」と石原慎太郎氏が問う。「あなた」とは、ニュースキャスターの安藤優子氏。話題は、先月末の日本維新の会の分党騒ぎの件だ。

 沈黙の後、安藤氏が「私はインタビュアーですから……」と答えた。「インタビュアーなのだから、テレビで自分の意見を言うわけにはいかない」という趣旨だ。

 テレビのニュースに関わる人々は、自分の考えを直接には表明しない。古舘伊知郎氏は特定の政治的立場に立っているように見受けられなくもないが、その立場をテレビで明言したことはない。かつての久米宏氏、筑紫哲也氏も同じだ。

 こうした人たちに踏み込んで「あなたはどう考えるのか」と問う政治家はいない。インタビュアーは「問う」という役割に特化した人間であって、他人から問われる者ではない、という了解が成り立っているようだ。

 数年前、ある閣僚が「女性は産む機械」と発言して問題となったが、テレビキャスターは「問う機械」ということになるだろうか。政治家は自身の政治的立場を明確にするのが普通だが、キャスターは自身について問われることを免れている。

 石原氏は政治家であると同時に文学者でもある。「個」に関わる文学者は、「自分はこう考える」が常に求められる。安藤氏に問うた石原氏は、相手が「問う機械」であることは重々承知の上で、あえて文学者として語っていたように見える。