韓国南西部の珍島沖の客船沈没事故では、…


 韓国南西部の珍島沖の客船沈没事故では、ずさんな安全管理、船長はじめ乗務員らのプロ意識や責任感の欠如などが次々と明るみになっている。

 船体の傾きは未熟な操船が原因のようだが、その後のポイントを一つひとつ押さえていくと、乗務員同士の連携の不十分さが被害拡大につながったことは明らかで、何ともやりきれない。

 船舶を安全に運航するには、それぞれの持ち場で乗務員が責任を果たすことが、非常に重要になってくる。長町三生著『安全管理の人間工学』では、安全管理に必要なこととして①仕事の目的は何か(作業目的)の共有――をまず挙げる。

 次に②仕事が完了した姿はどうなっていればよいのか(完了の理想的姿)③作業は誰とするのか(作業組織)④作業はどんな道具を使って、どういう手順で行えばよいのか(作業計画・作業手順)⑤問題が発生した時には誰に報告すべきか(作業責任)⑥作業の結果をどのような基準で評価すれば、完了したとみなしてよいのか(作業結果の評価)――など。

 飛行機や船舶の運航では、もちろん操舵(そうだ)技術が重要だが、安全確保には現場における作業管理の習熟も欠かせない。「作業責任の所在が不明確であれば、緊急場面で処理が遅れ、かえって危険場面を助長する」(同書)のだ。

 頻度は極めて低いが、万一起きてしまった時の被害が深刻であると予想される事故に関しては、日頃から乗務員の教育が必要だ。