「おっしゃる通りです」という言葉を耳にする…


 「おっしゃる通りです」という言葉を耳にする機会が、テレビを中心に最近多くなった。テレビ司会者(MCというらしい)の発言に対して、ゲストとして呼ばれた専門家が使うことが多い。別の表現に置き換えれば「仰せの通りでございます」だ。短く言えば「御意」。家老が殿様に向かって使うような物言いだ 。

 専門家もいろいろだから、誰もが言うわけではない。が、「おっしゃる通り」という物言いには、司会者への過度の迎合の姿が見えてしまう。気持ちのいいものではない 。

 テレビ司会者は、今や権力者になったのだろう。威張りくさっているとかいないとかいった個性の問題ではない。ワイドショーなどの司会という役割そのものが持つ権力の問題だ 。

 専門家の出番が終わると、司会者は「ありがとうございました」と言う。当然の挨拶だが、その際専門家も「ありがとうございました」と返すことが多い 。

 専門家は、テレビに出る機会を与えてくれてありがたい、と感謝しているのだろうが、これまた司会者の権力を視聴者に見せつけてしまう結果となる 。

 新聞のような活字媒体の座談会などでは、そうした光景は見えてこない。それに対し、テレビははっきりと司会者と専門家の上下関係を映し出す。「おっしゃる通り」は単なる言葉にすぎない。が、とりわけ話し言葉の場合、言語は上下関係を含んだ人間関係そのものを表すことも確かだ。