東京都武蔵野市にある井の頭恩賜公園は、いつ…


 東京都武蔵野市にある井の頭恩賜公園は、いつ行っても家族連れやカップルや子供たちで賑わっている。日曜日に訪れてみると、大勢の人々の視線が池にそそがれていた。

 水がないのだ。周囲にオレンジ色の網が張られている。「かいぼり」が行われたのだ。水を抜いて生物を捕獲し、在来種と外来種に分ける。さらに池の底を天日に干して空気にさらし、最後に水を入れて在来種だけを放す。

 池の姿をもとに戻すための作業だ。平成19年の調査によると、生き物の99%がオオクチバスやブルーギルなどの外来種。在来種はたった1%。昔いたムサシトミヨやタナゴやオイカワはいない。

 代わって入ってきたものの中にはヌマチチブやギギやソウギョもいる。変化したのは、これだけではない。昭和の初め頃まで水は透き通り、水温はほぼ一定。岸辺には浅瀬があって水生植物が繁茂し、昆虫も多かった。

 だが今、水は濁り、水温は季節によって変わり、水草はなくなった。最も大きな変化が見られたのは湧き水だ。市街化によって雨水が地下に浸透しにくくなったため、昭和30年代に涸(か)れて、その後は井戸水で補給している。

 一日に3万㌧あった湧き水は今は0・4万㌧。園内の水族園に行ってみると、いなくなったムサシトミヨやタナゴやオイカワを見ることができた。公園には2万本の樹木があるそうで、ここだけ別天地。池の姿がどこまで戻るのか、期待したい。