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10月からの新会計年度


地球だより

 ベトナムで車のノックダウン(組み立て)工場を取材した折、スコールが降り出したことがある。

 屋外にある数台の車両が気になった。エンジンなど精密機械にとって、水は天敵に近い存在だろう。だが担当者は平然と「シャワーテストだな」と言ってのけた。

 いつものことで、この程度のことであたふたするようでは、海外ではやっていけないという雰囲気だ。

 試されているのは、赴任した駐在技師の腹の図太さだと後で感じたことがある。

 中庭のタマリンドの小枝は、ベートーベンの第9をピアノで弾く時のように、激しく波打っている。だが、担当者のほほはピクリとも動かない。

 4月に新年度を迎えたミャンマーでは今年から、会計年度だけ4月から10月に変更になった。

 理由の一因は、このシャワーだ。ミャンマーの雨季は5月から9月だが、朝夕は毎日のように雷とともに豪雨に見舞われる。道路は冠水し、土木現場は泥地と化し足を取られる。

 ミャンマーの課題である道路や橋などのインフラ整備のための建設作業は、この時期には進まない。

 さらに4月は仏教暦の元日がある。もともと新年の始まりは、お釈迦様の誕生日を祝うためのものだった。当然、タイ同様、仏教国家のミャンマーでは長期休暇を取得する人々がほとんどだ。

 いわば、この時期というのは労働環境が劣悪というだけでなく、労働力も不足するなど、予算を策定した政府が道路工事などを発注しても、なかなか工事に着手できないという事情がある。

 ならばということで、ミャンマー政府は今年から会計年度を10月からとしたのだが、その試みが成功するかどうか水物というのが、ヤンゴン市民の覚めた見方だ。

 少なくとも例のベトナム駐在員ならば、シャワーごときであたふたするなと言いそうだ。

(T)