殺し屋を返り討ち


地球だより

 このほどマニラ首都圏で弁護士の男性がバイクに乗った殺し屋に襲撃される事件があった。

 バイクに乗った3人組の殺し屋は、車で移動中の男性を待ち伏せして運転席に銃撃を加えた。ここでターゲットがお陀仏になるケースがほとんどだが、何とこの男性は車をバイクに突撃させて2人の殺し屋をそのまま轢(ひ)き、返り討ちにしてしまったのだ。車は派手に横転したが男性はほぼ無傷で生還した。まるで映画のワンシーンのような展開である。とにかくこの国では何かトラブルがあると裁判所のほかに「殺し屋」という選択肢が普通に出てくる。いつ終わるか分からず、しかも公正に裁かれるか分からない裁判よりも、問題(相手)を消すほうが手っ取り早く確実だからだ。

 襲撃された弁護士の男性によると、仕事上のことで殺害予告の脅迫を受けていたという。もしかしたら襲撃に備え撃退法をイメージトレーニングしていたのかもしれない。

 今回の襲撃事件で返り討ちにされて死亡した殺し屋が、無断欠勤中の警官だったことも分かっている。日頃から銃を扱い慣れているので殺し屋には向いているのだろうが、この国ではありふれた話で大きな話題にはならない。弁護士も警官も法律に携わる仕事だが、最後は殺し合いで決着がつくというのが、この無秩序な社会の現状を浮き彫りにしている。

(F)