教育の貧困がテロを生む


地球だより

 エジプトに長年住んでいると、日本人やその家族、子供たちの様子を知りたくなるもので、カイロ日本人学校が毎年主催する「学習発表会」を何回か参観した。今年は、日本が無償供与で建設した「カイロオペラハウス」の小講堂で「感動を伝えよう!」をテーマに、20人前後の同校で学ぶ小学1年から中学3年までの生徒たちが、歌や演奏、劇、パネルデスカッションなどを披露、日ごろの学習成果を発表した。

 エジプトと日本の教育の比較をしてもらうために、エジプト人の友人にも参観してもらったが、友人は、日本の学校教育をとてもうらやましく思うと語り、嘆息した。エジプトでは、学芸会や運動会など、みんなで一緒に何かを協力して行うことは皆無だという。ただ黙々と暗記し、試験があるだけで、体育も図工も音楽もない。高校や大学でさえ限られたスポーツ以外のクラブ活動は何もないという。多人数が任意で集まることは基本的に禁止されているからだ。

 エジプトの小中学校は学校数が少なく、人口が多いこともあり、ほとんどが二部制だ。限られた時間では、音楽や美術、体育の時間が取れないこともあるのだろうが、イスラムの考え方自体が、芸術を評価しない傾向があるのも理由だ。日本がアラブ・イスラム世界に貢献できる最高のことの一つは「教育」ではないだろうか。教育の貧困が、豊富で客観的な知識の取得を阻害し、テロリスト輩出の一つの重要な原因になっている。

(S)