海外出稼ぎ


地球だより
 ベトナム政府はこのほど、年初から11月までに海外に送り出した派遣労働者数が、前年同期比10・6%増の約11万9000人に達したことを発表した。このうち女性は3万5000人だった。今年の年間目標値9万人を既に15%上回り、昨年通年の10万7000人をも超えて、過去最高値を記録した。

 11月に送り出した海外派遣労働者数は9800人(女性3700人)。このうち派遣労働者数が最も多かったのは台湾で、5300人(女性1700人)だった。これはベトナムのホーチミン市などに多い華人社会という民族構成の事情も絡んでいる。出稼ぎ国家としては横綱級で国民の100人に1人が海外就労しているフィリピンのパワーは英語が喋(しゃべ)れることにある。

 なおベトナムが送り込んだ海外就労者のうち、日本は2648人、マレーシアは735人、韓国は630人、サウジアラビアは265人だった。

 アフリカに人類始祖を持つとされる人間は、やがて世界各地に散らばり、現在の人口分布が形成されるに至ったとされる。人類の歴史は人口移動の歴史でもあった。人々は生活の糧のために新天地を求め、あるいは戦争で難民となったり市場と市場を結ぶ交易のため世界を移動したのだ。

 今はタイやインドネシアと経済連携協定を結び看護師や介護師などを受け入れるようになったわが国も、かつてはブラジルやハワイなど国を挙げて移民を奨励していた時期があった。こうした移民や海外就労の歴史から見ると波打つ新たなアジアの胎動が読み取れてくる。

(T)