高揚するウクライナ人の愛国心


地球だより

 ウクライナの首都キエフを流れるドニエプル川の畔を、ウクライナの友人と散歩する。人口280万人の大都市の真ん中に、これほどの水と緑の空間があることに改めて感銘を受ける。

 キエフ北部にあるアバロン地区では、最近整備されたウォーターフロントが人気だ。数日続いたうだるような暑さから逃れようと、人々が水辺に集まる。若者は川に飛び込み泳いでいる。遊歩道には洒落(しゃれ)たカフェやレストランが立ち並ぶ。

 筆者にとっては一年ぶりのウクライナ訪問。これまでにないほどのナショナリズムの高揚を感じる。市街の至る所に、ウクライナの空を象徴する水色と、豊かな麦畑を象徴する黄色の二色に染められた国旗が掲げられている。筆者の席にやってきた募金活動の青年たちは、募金でペンキを買い、ウクライナ国旗を街中に描くという。

 ドニエプル川から幾つも見えるウクライナ正教会の建物は、ロシア正教会と区別するために、聖堂前に国旗を掲揚するようになった。15階建ての建物の全面が、ウクライナ・カラーで塗られているアパートもある。

 今年は、例年のようにクリミア半島に避暑に行くウクライナ人はいない。ドニエプル川の賑(にぎ)わいはその反動だ。

 マレーシア機墜落のニュースが飛び込んできたときには、一斉に周りがどよめき、重苦しいほどの悲壮感が漂う。誰もが親露派の犯行を疑わない。

 次の日通りかかったキエフのオランダ大使館前では、弔花を手にした多くの人々が集まっていた。若者たちが、正に自分たちの同胞が亡くなったような面持ちで涙を流していた。

 ロシアのプーチン大統領は、ウクライナが本気で欧州に属し、決して以前のような隣国関係に後戻りしないという決意をさせてしまった。

(N)