サファリ化するタイの政治


地球だより

 バンコクのタイ空軍本部で行われる予定の選挙委員会とニワットタムロン首相代行による次期下院選の協議が、反政府デモの実力行使で中断に追い込まれた。

 空軍本部前の反政府デモ隊が建物内部にまでなだれ込んだため、協議を急遽(きゅうきょ)取りやめ現場から避難したためだ。

 なお反政府デモ隊とタクシン元首相支持派との亀裂はますます広がり、対立は先鋭化するばかりだ。反政府デモ隊が占拠するバンコク都内の民主記念塔周辺には15日、小型砲弾2発と銃弾が撃ち込まれ、男性3人が死亡、22人が負傷した。

 反政府デモ隊が今年1月から4カ月以上占拠したバンコク・ルンピニ公園では手製爆弾6個、防弾チョッキ10着などが回収されている。

 その昔、国会をどこに建てるかという時、国王は「政治家というのは野生動物のようにほえるばかりだから、動物園の隣がよろしかろう」と言ったとか、まことしやかにささやかれたものだ。

 実際、タイの国会は動物園の隣に位置する。子供の日などに児童に開放され、国会見学を楽しんだ後、その足で動物園に出向くというのが定番コースになってもいる。

 ともあれ黄と赤に二分されるタイの政治情勢は、バンコクを野生動物サファリに変えつつある。

(T)