TPP年内発効、参加国拡大で自由貿易推進を


 米国を除く環太平洋連携協定(TPP)参加11カ国の新協定「TPP11」が12月30日に発効することが確定した。相互に高関税で応酬する貿易戦争に収束の兆しが見えない中、11カ国には参加国を拡大し、自由貿易を推進して保護主義に歯止めをかけることが求められる。

6カ国の国内手続き完了

 TPPは2015年10月、12カ国で大筋合意したが、米国が17年1月のトランプ大統領の就任直後に離脱。残る11カ国が今年3月にTPP11に署名し、オーストラリアが10月末に批准したことで発効に必要な6カ国の国内手続きが完了した。

 11カ国の人口は約5億人、国内総生産(GDP)は世界全体の約13%を占める。TPP11の日本における経済効果は約7兆8000億円に上るという。

 米中の貿易摩擦が激化し、世界経済の減速懸念が強まっている。関税・ルール両面で高いレベルの自由化を実現するTPP11の発効は、多国間の経済成長を支える自由貿易体制の強化につながるものだと言える。

 保護主義に対抗するには、TPP参加国の拡大も求められよう。これまでタイや英国などが加盟への関心を示しており、交渉を担った茂木敏充経済再生担当相は「自由で公正な21世紀型の新しいルールに賛同する動きは歓迎したい」と参加国拡大に意欲を見せた。

 そこには当然、米国の復帰も念頭にあろう。トランプ氏は復帰の可能性に言及したこともあるが、現在のところは2国間交渉で自国に有利な条件を引き出す手法を重視している。

 日本は米国との間で、来年1月中旬にも2国間の物品貿易協定(TAG)交渉を始める。今年9月末の日米首脳会談後に発表した共同声明では、TAG交渉で扱う日本の農林水産分野の自由化水準について、牛肉関税を9%(現在38・5%)まで引き下げるTPPなど過去の経済連携協定の合意水準が「最大限」と明記した。

 だが米国はTPPに背を向けたことで、TPP11の発効後は牛・豚肉、小麦、乳製品などの農産品の輸出が競合国に比べ不利になることが避けられない。このため、TAG交渉でTPP以上の譲歩を迫ることも考えられる。トランプ政権は、交渉中は日本製自動車への追加関税を発動しないとしているが、強引な手法を取れば日本との関係にも悪影響を及ぼしかねない。

 「中国包囲網づくり」の側面もあったTPPは物品関税の撤廃・削減だけでなく、知的財産権の保護や貿易・投資の先進的なルール導入が特長だ。トランプ政権の対中制裁関税発動は中国による知財侵害が理由だが、TPP参加国が増えてルールが定着すれば中国を牽制(けんせい)することにもなる。トランプ氏は世界経済に打撃を与える保護主義的な政策を取るよりも、高いレベルの自由貿易を推進すべきではないか。

米に復帰を働き掛けよ

 本来であれば米国のTPP復帰が望ましい。11カ国に米国が加われば、人口は8億人以上、GDPは世界全体の約4割に拡大する。

 日本は米国に復帰を粘り強く働き掛ける必要がある。