太陽光発電停止、混乱避けるための妥当な措置


 九州電力は太陽光発電事業者の一部に発電の一時停止を求める「出力制御」を2日連続で実施した。

 電力の安定供給を維持する上で妥当な措置だと言えよう。

大停電に陥る事態想定

 出力制御は、電力の供給が需要を上回り、需給バランスが崩れて大規模停電に陥る事態を回避するための措置で、停止要請は離島を除き国内初となる。九州地方は晴天で太陽光発電の供給量が増える一方、土日の休みで工場などの電力需要は減ることが予想されていた。

 9月の北海道地震でほぼ全域が停電した「ブラックアウト」は、地震による発電所の停止で需要が供給を上回ったことで起きた。今回は、これと反対の事態を想定したものだ。大規模停電による混乱を避けるため、電力の安定供給に努めることは理解できる。

 国の「優先給電ルール」は、電力供給が需要を上回る場合、まず火力の制御、揚水発電所の活用、他の電力会社への融通などを行う。それでも供給過多となる場合、太陽光・風力などを抑制する。地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出せず、長期固定電源と位置付けられている原子力・水力・地熱発電は最も優先されている。九電もこのルールに基づいて出力制御を行った。

 太陽光発電は、2012年7月に始まった「固定価格買い取り制度(FIT)」で急速に普及した。九州では今年8月末時点で導入量が807万㌔㍗に上っている。九州の面積は全国土の1割程度だが、太陽光発電の設備量は全国の約2割だ。

 法律では、原則として発電を止めた事業者に電力会社が補償金を支払う義務はない。電力需要は、冷暖房の使用が少ない春と秋に減少する傾向があり、九電管内では工場などが停止する週末を中心に、再び出力制御が行われる可能性がある。今後も出力制御を頻発すれば、事業者の収益を圧迫し、再生可能エネルギーの利用拡大を妨げることが懸念されている。

 再生エネは温室ガスを排出せず、国内で生産できるためエネルギー安全保障にも寄与すると評価されている。ただ発電量が天候に左右されるため、火力や原子力に比べて不安定だ。

 政府は7月に閣議決定したエネルギー基本計画で、再生エネの「確実な主力電源化」を目指し、30年に再生エネによる発電割合を22~24%に引き上げるとしている。

 このためには、電力会社間で電力の融通をしやすくする送電網の増強や発電した電気を大量にためる蓄電池が欠かせない。しかし送電網増強には多額の投資が必要で、蓄電池の実用化には時間がかかるのが現状だ。出力制御も、こうした課題を示したものだと言える。

不公平感を生じさせるな

 一方、今回九電から発電停止を指示された事業者名が公表されなかったため、指示を受けた事業者からは「公平に選ばれているのか」との声も上がっている。出力制御のために発電停止を求める事業者を選ぶ際には、事業者間に不公平感が生じないよう透明性を確保することが求められる。