相次ぐ企業不正、日本製品への信頼揺るがすな


 三菱マテリアルや東レの子会社で品質データの改竄(かいざん)が判明した。同様の不正は先月、神戸製鋼所でも発覚している。

 現在のところ安全上の問題は生じていないが、日本製品への信頼が揺らぎかねない事態だ。

品質データの改竄発覚

 三菱マテリアルの子会社2社は、検査記録データの改竄によって顧客が求める品質や社内基準を満たさない「不適合品」を出荷していた。納入先は274社に上る。この中には防衛省も含まれ、自衛隊の航空機や艦艇に不適合品が使用されていたというから深刻だ。特に見過ごせないのは、今年2月に不正を把握しながら10月下旬まで出荷を続けていたことだ。

 東レの子会社でもタイヤ素材などの品質データを改竄していたが、こちらも2016年7月には不正があることを知っていたにもかかわらず、1年4カ月も公表しなかった。法令違反や安全上の問題が生じていないとして、当初は公表する考えがなかったという。両社とも危機意識が極めて低いと言わざるを得ない。

 経団連の榊原定征会長は東レ前社長(現相談役)で、不正行為は社長在任中に始まった。経団連会長の会社でデータ改竄が発覚したのでは、こうした不正が日本企業に蔓延(まんえん)しているのではないかと疑いの目を向けられかねない。

 製造業では、契約した数値を下回っていても納入先の了解を得て納入する「特別採用」という取引がある。だが、神鋼も東レも今回のケースでは了解を得ていなかった。東レの場合、今回よりも低い数値の製品について顧客に説明し採用され、問題がなかったという経験のあったことが不正につながった。

 納入先が求める数値はオーバースペック(過剰性能)であるため、契約した数値を下回っても安全性を確保できるとの考えも生産現場では根強いようだ。しかし、納入先がオーバースペックを求めるのも相応の理由があろう。安全だからといって、契約違反が許されるわけではあるまい。

 今回不正が発覚したのは、いずれも素材メーカーだ。自分たちの製品がどのように利用され、最終消費者に届くか分かりづらいことも、不正の背景にあると指摘されている。

 東京株価市場では東レの株価が急落。終値は前日比58円50銭安の1046円だった。神鋼や三菱マテリアルの株価も不正発覚前に比べて大幅安で推移している。

 株主の信頼を大きく損なったことは明らかだ。神鋼グループの7工場では、品質管理の国際規格である国際標準化機構(ISO)9001の認証が一時停止されたり、取り消されたりしている。

契約順守を徹底せよ

 不正は素材メーカーに限らない。日産自動車やSUBARU(スバル)では、資格のない従業員が完成検査を行っていたことが発覚している。日産は約120万台、SUBARUは25万台強のリコール(回収・無償修理)に追い込まれた。

 企業は消費者の厳しい目を意識し、再発防止と契約順守を徹底すべきだ。