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アジア投資銀、中国の金融野心に与するな


 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の年次総会が、韓国南部の済州島で開催された。中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」を資金面で支える役割があるAIIBの加盟国・地域は80と、規模の上では日米が主導するアジア開発銀行(ADB、加盟国・地域67)を上回っている。

加盟期待し日米に秋波

 しかし、開業した昨年1月からの投融資は計16件、25億㌦でしかなく、しかもこのうち12件、19億㌦が協調融資だ。背景には、資本市場から低金利で資本調達するために必要な高い格付けを見込めないことがある。

 このためAIIBが期待を掛けるのが、日米の加盟だ。AIIBの資本金は人民元建てではなくドル建てだが、ドル発行国の米国とアジアで豊富な融資実績を持つ日本が加盟すれば高い信認を獲得できるため、AIIBの金立群総裁は「われわれのドアはいつでも開いている」と秋波を送る。

 これに応じるように先月、北京で開催された一帯一路国際フォーラムに参加した二階俊博自民党幹事長はAIIBについて「結論を先延ばしにしていたらチャンスを失う」と述べ、早期加盟するよう安倍政権の尻を叩いた。

 もとより中央アジアからヨーロッパに向けて高速道路と鉄道を整備し、東南アジアからインド洋を経てアフリカ大陸に至る海上ルートを開く中国の壮大な一帯一路構想は夢をかき立てはする。

 しかし、中国の本音は国外に大規模インフラの需要をつくり出すことで生産過剰の鉄鋼やセメントなどの自国企業に受注機会を提供し、生産資材を海外輸出して減速傾向の国内景気を底上げすることだ。さらにユーラシア大陸を包括する経済圏を構築しその盟主に収まることで、米国の覇権構造を突き崩したいという遠謀がある。

 一帯一路の資金調達を担当するAIIBに関しても、世界銀行とADBの影響力を弱めようとする中国共産党の思惑を見落としてはならない。

 何よりAIIBのガバナンスには致命的欠陥がある。

 資本金1000億㌦のうち、中国の出資額は297億㌦で30%近くを占め、最大となる。中国は出資比率に基づく議決権でも25%を超え、増資などの重要案件で事実上の拒否権を確保する。AIIB本部は北京にあり、総裁も中国人だ。

 しかも世銀やADBと異なり、本部常駐の各国政府代表者(理事)を置かない。つまり、常駐の理事による日常的な業務のチェックや融資案件ごとの可否の判定は行われない。

恣意的な運用の恐れ

 こうした方式ではアジアの各加盟国間でインフラ支援の優先度をめぐる政治的な意図が共有できず、中国の恣意(しい)的運用がまかり通る恐れがある。中国は総裁と本部をともに手にし、資本の3割を拠出するだけで、2国間支援に比べて3倍以上の投資効果でインフラ整備を行える魔法の杖を手にすることになりかねない。

 わが国は透明性を含めたガバナンス面での改善がない限り、AIIBに与(くみ)してはならない。

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