回復実感が乏しい国内景気


 年率2・2%の成長で、約11年ぶりに5四半期連続のプラス――2017年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、内外需が共に成長を牽引(けんいん)し、“いい数字”が並んだ。

 だが依然として景気に力強さはなく、回復の実感に乏しい。個人消費など内需の行方や海外情勢などに不安材料も少なくない。景気の先行きを楽観できる状況ではない。

楽観できない先行き

 内閣府が発表した1~3月期のGDP(季節調整済み)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・5%増、年率換算では2・2%増だった。前期(16年10~12月期)は同1・4%増だったから、伸びが加速した形ではある。

 1~3月期は、これまで成長を主導してきた外需(輸出)に加え、個人消費などの内需も伸びたことが特徴と言える。

 輸出は訪日外国人観光客の消費増などで2・1%増と3期連続で増加。内需も個人消費をはじめ公共投資を除く全ての項目で前期比プラスになった。

 実質GDPの増減にどれだけ影響したかを示す寄与度は、内需が0・4%、外需が0・1%と内需が外需以上に成長を牽引した。これで約11年ぶりに5四半期連続のプラス成長となったのである。

 確かに「緩やかな回復基調は続いている」(石原伸晃経済財政担当相)と言えるが、力強さのなさは相変わらずである。

 もちろん回復の実感が乏しいのは、物価の影響を反映し生活実感に近い名目GDPが、1~3月期は前期比0・03%減(年率では0・1%減)と5期ぶりにマイナスになってしまったこともあろう。だが、やはり伸び自体が大きいとは言えないのである。

 今回、成長を牽引した内需だが、個人消費は前期比0・4%増、設備投資も同0・2%増にとどまっている。住宅投資が0・7%増と、やや大きく伸びはしたが、これには東京五輪・パラリンピックの選手村施設の建設という一時的要因で押し上げられた面もある。

 要するに、政府が期待する経済の好循環の実現には依然至っておらず、今後も成長ペースが持続できるかは予断を許さないということである。

 現に、先行きへの懸念要因は少なくない。前年同期に比べ2%台の伸びを続けてきた雇用者報酬は0・5%増にとどまり、急ブレーキがかかった。大企業では基本給を底上げするベースアップが4年連続で実現したが、上昇ペースは落ちている。原油高を受けたガソリン価格の上昇などが消費に冷や水を浴びせる恐れもある。

一層の内需拡大に注力を

 トランプ米政権の政策運営はじめ、一触即発の北朝鮮、中東情勢なども懸念材料で、世界経済の先行きに不透明感が強まれば、輸出減を通じて日本経済を下押しする。今回成長を主導した個人消費、輸出とも盤石というわけではなく、景気の先行きを楽観できる状況にはないことを肝に銘じるべきである。

 安倍政権の経済政策の主目標であるデフレ脱却は道半ば。一層の内需拡大に注力する必要がある。