クロマグロ、持続可能な資源の活用を


 すしネタとして人気の太平洋クロマグロの漁をめぐって、岩手、宮城、千葉、新潟、静岡、和歌山、熊本、鹿児島の8県で違反操業や水揚げの報告漏れがあった。

 高値で取引されるクロマグロは、乱獲で生息数が減少している。違反防止を徹底し、資源の保護と持続可能な活用に努めるべきだ。

違反操業や報告漏れ判明

 クロマグロについては、太平洋海域に生息する親魚が2014年に約1・7万㌧と歴史的な低水準が続いている。国際自然保護連合(IUCN)は14年、太平洋クロマグロを絶滅危惧種に指定。資源保護に取り組まなければ、絶滅の切迫度が高まると警告した。

 日本や韓国、米国など26カ国・地域が加盟する中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)では、15年から30㌔未満の小型魚の漁獲量を02~04年平均実績に比べ半減させることで合意している。

 日本は漁を承認制とし、都道府県ごとに漁獲枠を割り当てて漁業者に自主的な協力を求めているが、昨年12月に長崎、三重両県で違反操業が発覚。違反による漁獲は90㌧以上とみられ、日本の年間上限4007㌧の2%超に当たる。

 そして今回、水産庁による沿岸部の39都道府県を対象にした実態調査で、新たに8県の違反操業などが明らかになった。静岡では承認を得ないで漁を行っていた事例が判明。水揚げを報告していないケースも7県で見つかった。資源回復に向けた努力に水を差すものだと言わざるを得ない。

 国内では漁業現場への指導にばらつきが見られる。しかし違反が繰り返されれば日本の信用が低下し、絶滅の恐れのある野生動植物を保護するためのワシントン条約で、クロマグロの国際取引が規制される可能性も高くなる。

 規制対象となれば、日本の食卓や外食産業に大きな影響が出よう。世界最大の消費国である日本は、率先して資源管理を徹底すべきだ。

 クロマグロ漁に対する国際社会の視線は厳しい。昨年12月に開かれたWCPFCの年次会合では、欧州連合(EU)が「資源量が低いのに措置は甘い。もっと厳しくすべきだ」と日本を批判。「遅くとも34年までに漁業が本格化する前の親魚の量の20%まで回復させる」との内容で合意した。

 水産庁は管理強化のため、資源評価に基づき年間の漁獲可能量(TAC)を決める法制度の対象に、新たにクロマグロを加える政令改正を今年4月に実施する。

 18年1月から、漁獲枠を超えても操業を続けるような停止命令違反は3年以下の懲役または200万円以下の罰金、水揚げ数量の報告違反は30万円以下の罰金の対象となる。

管理徹底で回復させよ

 大西洋クロマグロの中心漁場である東大西洋・地中海では、00年代から30㌔未満の未成魚の捕獲を原則禁止とするなどの規制強化で資源が回復した。太平洋クロマグロに関しても、資源の管理徹底と活用を両立させる必要がある。