訪日客急増、地方創生につなげる工夫を


 今年の訪日外国人客数は7月時点で1000万人を突破した。これまで最速だった昨年より3カ月早い達成だ。

 訪日客の増加を、日本の大きな課題である地方創生にもつなげたい。

 7月に1000万人突破

 7月も前年同月比51・0%増の191万8400人で、単月ベースの最高記録を3カ月ぶりに更新。円安や訪日ビザの発給要件緩和、航空路線・便数の拡充などが追い風となった。

 国・地域別では、首位の中国が前年同月比約2・1倍の57万6900人。国別の月間訪日客数で初めて50万人を超えた。2位台湾は29・5%増の36万1700人、3位韓国も37・1%増の34万3800人と大幅に増加。このほか香港、米国、タイなども伸びた。

 観光庁の久保成人長官は、今年の訪日客数について「特段の外的要因がなければ1800万人を超える」と述べ、過去最高だった昨年の約1341万人を大幅に上回るとの見通しを示した。1800万人に達すれば、関連投資も含め国内総生産(GDP)を4兆円程度押し上げるとの見方もある。政府は2020年に2000万人に増やす目標を掲げているが、前倒しで達成する可能性もある。

 中国の景気減速で伸びが鈍るのではないかとの懸念も出ている。日本の魅力を伝える工夫を重ねたい。

 訪日客には、東京、京都、大阪を旅する「ゴールデンルート」や富士山が人気だった。だが最近はリピーターが増え、訪れる場所もアニメの舞台や地場産業の体験施設など多様化している。地方が訪日客を誘致すれば、地域経済を活性化して地方創生にもつながる。

 観光庁は6月、訪日客向けにPRする七つの「広域観光周遊ルート」を選定した。東北地方を巡るコースは「日本の奥の院・東北探訪ルート」と命名。主に台湾や香港の個人旅行客をターゲットにプロモーションを展開する。瀬戸内地域の「せとうち・海の道」は、欧米の富裕層に景観と歴史的建築物を紹介するルートに育てていく方針だ。

 一方、イスラム教徒の比率が高いマレーシアやインドネシアからの訪日客も増えているが、日本の受け入れ環境は十分に整っていない。

 観光庁が宿泊施設やレストラン向けに作った手引書では戒律にのっとった食事に関して、厳格な基準で認証された「ハラル食材」を使わなくても、豚が入っていないと明示するだけで安心できる人もいるとして、ハードルを下げて実践することを求めている。

 政府は訪日客の増加に対応するため、従来の国家資格「通訳案内士」に加え、16年度には自治体が養成する地域限定ガイドにも有料での外国人案内を認める方針だ。観光立国実現に向け、訪日客の満足度を高める取り組みが欠かせない。

 日本の良さ伝えたい

 今年4月に開かれた日中韓の観光担当相会合では、3カ国間の相互訪問者を20年に3000万人に増やすなどとした共同声明を採択した。

 中韓を含む多くの訪日客に日本の良さを伝えたい。

(9月3日付社説)