GDP大幅減、来秋の消費再増税は慎重に


 2014年4~6月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)が、物価変動の影響を除いた実質で前期比1・7%減、年率換算では6・8%減と、大幅なマイナス成長になった。

 安倍晋三首相は今後の経済状況をみて、来年10月予定の消費再増税の是非を年末に判断するが、7~9月期は高い成長率が予想されることを考慮し、予断なく慎重に臨んでほしい。

 目減りする実質所得

 4~6月期GDPがマイナス成長になることは、4月からの消費税増税に伴う反動減から政府内でも「想定内」だったが、その落ち込み幅は予想以上だったようである。

 東日本大震災があった11年1~3月期(年率6・9%減)以来の大幅なマイナスで、減少率は前回の消費税増税直後の1997年4~6月期(同3・5%減)を大きく上回った。

 これは景況感の回復や賃上げなどによって、1~3月期の駆け込み需要がそれだけ大きかったからとも言える。「山高ければ谷深し」の言葉通りである。

 7~9月期はその分、また高い成長が見込まれ、民間エコノミストの間では平均で年率4%程度のプラス成長が予想されている。だが、4~6月期で数字とともに尋常でないのは、中身の悪さである。

 落ち込みは個人消費にとどまらず、住宅投資、設備投資、公共投資と国内需要の主要項目に及ぶ。唯一、在庫投資が成長率押し上げに寄与したが、これも内需が予想以上に振るわず、意図せざる在庫が積み上がったからで、決して喜べる状況ではない。在庫投資と同様、外需が今回はプラスに寄与したが、これも輸出(前期比0・4%減)以上に、輸入(5・6%減)が内需の低迷から落ち込んだためである。

 特に深刻なのは、やはり個人消費で、その減少幅(5・0%減)は、駆け込み需要で上振れした1~3月期の増加幅(2・2%増)の2倍以上。しかも、自動車や家電などの耐久消費財にとどまらず、衣料品などの半耐久財や食品などの非耐久財も軒並み減らし、サービス消費もマイナスに陥った。

 家計調査などが示すように、増税に伴う物価上昇に賃上げが追い付かず、実質所得は目減りしている現状である。家計が予想以上に財布のひもを締めた可能性があるということである。

 本紙は、デフレ脱却途上での消費増税は「三本の矢」政策でようやく回復してきた景気を腰折れさせ、名目GDPの拡大を通じた税収の自然増加のプロセスを自ら壊すことになると懸念してきた。

 今回、名目GDPは前期比0・1%減、年率換算で0・4%減。早過ぎた消費増税による残念な結果である。

 予断許さぬ経済状況

 来秋の消費再増税の是非について、最も重要な判断材料となるのが、7~9月期のGDPである。

 政府関係者の多くは強気の見通しを依然崩していないが、所得環境の悪さや輸出環境の不透明さ、原発停止によるコストの上昇など、日本経済を取り巻く状況は予断を許さない。再増税ありきは厳に慎みたい。

(8月16日付社説)