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トランプ氏、ハノイ米朝会談で金正恩氏に陣営選択迫る


「米国か中国か」即答せず決裂

 2月にベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談でトランプ米大統領が金正恩朝鮮労働党委員長に対し、米国陣営か中国陣営か選択を明確にするよう迫っていたことが分かった。日本政府関係筋が18日、本紙に明らかにした。トランプ氏は核を完全廃棄し米国の味方につくなら大規模な経済支援に踏み切ると提案したが、金正恩氏は即答せず、会談は決裂したという。(編集委員・上田勇実)

トランプ米大統領(左)と金正恩朝鮮労働党委員長

2月28日、ハノイで開かれていた米朝首脳会談で合意できなかった両首脳。写真右は会談場を車で後にする北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(事)。同左は記者会見を終えたトランプ米大統領(EPA時事)

 これまで会談決裂は、トランプ氏が寧辺核施設以外にウラン濃縮をはじめとする全ての核・ミサイル関連施設の廃棄を迫り、正恩氏がこれを拒否したためとみられていた。だが、実際にはトランプ氏が完全非核化以上の陣営選択を迫っていたことになる。

 トランプ氏は米国をはじめ国際社会による経済制裁で北朝鮮の国内経済が逼迫(ひっぱく)する中、正恩氏に生き残りを懸けた決断を迫ったが、非核化と制裁緩和をめぐる駆け引きを想定していた正恩氏は「全く予想外の二者択一を突き付けられ当惑した」(同筋)ようだ。

 会談決裂後、正恩氏は宿泊先のホテルに戻る際、車中でこわばった表情だったのが確認された。翌日未明、北朝鮮が急遽(きゅうきょ)開いた記者会見に同席した崔善姫外務次官(現、第1外務次官)は正恩氏の様子を「米国が行う計算法について理解し難い様子だった」と述べた。

 ただ、トランプ氏の提案に対し正恩氏の妹である金与正・党宣伝扇動部第1副部長は前向きな姿勢を示したという。

 正恩氏は2度の米朝首脳会談を前後し、計4回にわたり訪中し習近平国家主席と会談するなど中朝の対米連帯を誇示。今年1月の4度目訪中は正恩氏の誕生日とされる8日に北京入りする蜜月ぶりを見せている。

 一方、米国は中国との貿易戦争をエスカレートさせ、既に双方の覇権争いである新冷戦が始まったとの見方が支配的だ。

 米中いずれの味方か選択を迫ったトランプ氏の提案は、北朝鮮に中国依存を見直すよう促したものと言える。

 正恩氏は今月11、12日に平壌で開催された最高人民会議(国会に相当)での演説で、「米国はわれわれを武装解除させた後に制度転覆の野望を実現させる条件をつくろうと努力している」と指摘、「いかなる挑戦と難関が前に立ちふさがっても国家と人民の根本利益と関わる問題においては少しの譲歩も妥協もない」と米国を牽制(けんせい)するなど、トランプ氏の提案を事実上拒否した。

 正恩氏は今月末までに、ロシアを訪問しプーチン大統領と初の首脳会談に臨む。中国に加え、安全保障面で米国との対立が表面化しているロシアと関係を強化し、反米体制で経済難を乗り切りたいとの思惑がありそうだ。