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トランプ演説、攻撃姿勢封印し結束呼び掛け


 トランプ米大統領が連邦議会上下両院合同会議で行った演説は、敵対勢力を徹底的に批判・攻撃する「トランプ節」を封印し、偉大な米国を取り戻すために党派対立を乗り越えて結束を呼び掛ける格調高い内容だった。深まる米社会の亀裂を修復するのは容易ではないが、トランプ氏が「大統領らしさ」を国民に示した意味は大きい。

 「米国精神の再生」というテーマが物語るように、トランプ氏の演説で目立ったのは米国民の愛国心や誇りに訴え掛ける言葉だ。特に、ハイライトとなったのが、1月にイエメンで実施された急襲作戦で犠牲になった米特殊部隊員の妻を紹介した場面。「(特殊部隊員は)国家と自由を守るために命をささげた」などと強調すると、しばらくの間スタンディングオベーションがやまなかった。

 また、演説の終盤では「われわれはみな同じ血を流し、同じ旗に敬礼し、同じ神によって創られた」とも語った。

 オバマ前大統領のリベラル路線で生まれた米社会の分断は、トランプ氏の登場で一段と深まった感がある。これに対し、トランプ氏は米国民としての誇りやアイデンティティーを前面に押し出すことで、党派間、人種間、宗教間の対立を克服し、結束をもたらそうとしていることがうかがえる。

 波紋を広げるメキシコ国境の壁建設に関しても、トランプ氏は反対勢力に対し「(不法移民によって)雇用や収入、愛する人を失った米国の家族に何と言うのか」と疑問を投げ掛けた。その政策の是非はともかく、トランプ氏に一貫しているのは、排他的と呼ばれようとも米国民の利益を優先しようとする姿勢だ。

 「米国民に対する本当の愛情はわれわれに合意点を見いだすことを要求している」。トランプ氏は米国民の利益を最大化するという原則で野党民主党と一致点を模索したいと考えているようだ。一回の演説で深い分断を克服できるほど現実は甘くはないが、トランプ氏が真摯(しんし)に協調を求め、大統領らしさを示したことは、政権運営を安定化させる上で重要な一歩といえる。

(アメリカ総局長・早川俊行)