世界日報 Web版

クリントン氏指名、米民主党の世俗化を懸念


 米民主党全国大会で、大統領候補にオバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏が正式に指名された。米国の主要政党では初の女性候補だ。

政策綱領で同性婚支持

 クリントン氏は指名受諾演説で、共和党候補のドナルド・トランプ氏を「われわれを世界から、そして互いにも分断したがっている」と批判。より自由、公正で強い米国の実現に向けた決意を表明した。

 党大会では民主党政治に精通する穏健派で、バージニア州選出のティム・ケーン上院議員を副大統領候補に指名。「米国第一主義」を掲げ、内向き政策に傾くトランプ氏への対抗を前面に出した党政策綱領を採択した。

 クリントン氏は民主党候補の中でも名声、人脈、資金力を備えたエスタブリッシュメント候補として、早くから本命視されていた。しかし、民主社会主義者バーニー・サンダース上院議員が予想外の善戦を示し、多額の企業献金を受けている既存政界の代表としてウォール街に近いとされたクリントン氏の苦戦が続いた。

 ケーン氏の副大統領候補指名は、激戦が予想されるオハイオ、フロリダに並ぶバージニア州の獲得に向け、戦いを有利に進めやすくなる。ケーン氏はスペイン語に堪能で、ヒスパニック(中南米系)の支持拡大を期待できる。

 ただ、環太平洋連携協定(TPP)に反対する意思表示をしたクリントン氏と違い、ケーン氏は締結に前向きだ。リベラルな支持層を遠ざける恐れがあり、正・副大統領候補の連携に水を差しかねない。

 綱領は、サンダース氏の持論である最低賃金時給15㌦(約1580円)や金融改革が盛り込まれるなど、前回2012年に採択された綱領より左寄りに大きく舵(かじ)を切ったものになった。こうした態度の変化を無党派層がどう判断するかも注目される。

 また、同性婚や人工妊娠中絶の問題についても支持を打ち出した。同性愛者など性的少数者(LGBT)の権利拡大を前面に押し出している。民主党の価値観の急激な世俗化を示しており、米メディアからは、民主党史上最もリベラルな内容との評が出ている。

 党大会ではトランプ氏だけでなく、同性婚合法化で脅かされる信教の自由を守ろうとした共和党の副大統領候補マイク・ペンス・インディアナ州知事も批判された。だが「家族の多様化」は米国社会に混乱をもたらしかねず、懸念される。

 このほか、サンダース氏を支持する代議員が、プレスセンターに大挙して押し掛け、座り込みを繰り広げるなど抗議活動を展開。党全国委員会が指名争いでクリントン氏に肩入れしていた疑惑が内部告発サイトの暴露で明らかになり、デビー・ワッサーマンシュルツ委員長が辞任を表明した。共和党もさることながら、民主党も一枚岩になれないまま本選に臨む。

日米関係の在り方論じよ

 政策綱領には「日本への歴史的な関与を続ける」と記されている。クリントン氏は今後の選挙遊説、集会、テレビ討論などで、目指す日米関係の在り方について論じる必要がある。