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共和党大会トランプ氏、ポピュリズム色濃い受諾演説


2016米大統領選

 米共和党大会で大統領候補指名受諾演説を行ったドナルド・トランプ氏は、11月の本選で民主党のヒラリー・クリントン前国務長官に勝利し、ホワイトハウスを奪還することを誓った。4日間に及ぶ党大会を経て、共和党は「異端児候補」とともに戦う覚悟を固めたと言えるが、トランプ氏が克服しなければならない課題は多い。

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21日、共和党大統領候補の指名受諾演説を行うドナルド・トランプ氏=岩城喜之撮影

 トランプ旋風の原動力になってきたのは、リベラルな政策を推し進めたオバマ政権とこれを止められない共和党既成政治家に対する「怒り」だった。だが、怒りに任せて現状を破壊するだけでなく、どのような未来を築くのか、建設的ビジョンを示していくことが求められる。トランプ氏に決定的に欠けているのはこの部分だ。

 党大会のハイライトとなったトランプ氏の指名受諾演説は、さまざまな有権者層を意識したポピュリズム(大衆迎合主義)の色彩が濃い内容だった。また、民主党候補に指名されるクリントン氏批判にかなりの時間を費やした。

 本来、希望的な将来像を競い合うはずの米大統領選は今回、トランプ氏とクリントン氏という不人気候補同士による「どちらがましか」の争いとなってしまっている。共和党大会では私用メール問題で訴追を免れたクリントン氏を「収監しろ」という言葉がスローガンのように連呼されていたことは、政策論争よりも中傷合戦中心の選挙戦になることを予感させた。

 ただ、トランプ氏は奔放な言動で注目を集める「炎上商法選挙戦略」を主導してきた選対本部長のコーリー・ルワンドウスキ氏を解任し、副大統領候補には安定感がある正統保守派のマイク・ペンス・インディアナ州知事を起用するなど、「大統領らしさ」を示す堅実路線にギアチェンジした印象を受ける。これは党内の不信感を緩和するのに役立つとみられる。

 党内の結束以上に困難が予想されるのは、マイノリティー(少数派)の支持獲得だ。特に、不法移民排除の主張により、急増するヒスパニック(中南米系)有権者を完全に遠ざけてしまった。党大会参加者は白人が圧倒的に多く、白人票頼みの選挙戦略で本当に勝利できるのか、大きな疑問が残る。

 また、最終的に大統領選の行方を大きく左右するのは、カネと組織だが、トランプ氏はこの両方でクリントン氏に大きく出遅れている。トランプ氏は大急ぎで資金を集め、激戦州に強固なネットワークを築かなければならない。11月の投票日まで3カ月余り。トランプ氏には指名獲得の喜びに浸っている余裕はない。

(クリーブランド(米オハイオ州)早川俊行)