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米国防長官更迭、アジア戦略に支障出ないか


 オバマ米大統領はヘーゲル国防長官が辞任すると発表した。まだ在任1年9カ月である。米紙ニューヨーク・タイムズは、辞任がオバマ大統領の要請に基づくものだと報じており、事実上の更迭と見てよい。

 安保政策で大統領と対立

 ヘーゲル氏はベトナム戦争に従軍後、1996年に上院議員に初当選し、2008年まで安全保障問題に精通した共和党議員として業績を残した。13年2月に従軍経験のある人物としては初めて国防長官に就任した。

 後任決定は年明けになると思われるが、オバマ政権の国防長官はこれで4人目となり、第2次世界大戦後では最多を記録。オバマ政権で国防長官を務めたゲーツ、パネッタ両氏は、退任後に出版した回顧録でいずれも、大統領には断固たる行動力がないことを強く批判している。

 こうした事態が起こる背景には、外交・安保政策におけるホワイトハウスと国防総省の対立があった。最近では、過激派組織「イスラム国」の台頭やウクライナ情勢をめぐる軋轢(あつれき)が生まれ、オバマ大統領には、世界の新しい脅威に対処するため、国防総省の指導者交代もやむなしとの認識があるとされる。

 ヘーゲル氏はこの10月末、オバマ政権のシリア政策を批判する書簡をホワイトハウスに送っている。国防長官辞任で政権の安全保障チームの足並みの乱れが露呈したと言えよう。

 菅義偉官房長官はヘーゲル氏について「日米同盟強化、アジア太平洋地域の平和と安定に尽力されたことに感謝したい」と述べ、「今後とも米国と緊密に連携し、強固な日米関係を構築したい」と強調した。

 だが、米外交専門誌フォーリン・ポリシーは、ヘーゲル氏の辞任がアジア諸国、とりわけ日本など同盟国に不安と困惑を生む、と分析している。オバマ政権の「アジア基軸外交」を推進してきたのも、ヘーゲル氏の功績の一つである。オバマ大統領に「尖閣は日米安保条約の適用範囲」と言わせたのも、ヘーゲル氏であったとされる。

 オバマ大統領の演説、発言からは、米国に代わって世界のリーダーになれる国はないという姿勢が、常に感じられる。確かに米国は政治、経済、軍事あらゆる面において他国を凌駕しているし、だからこそ米国の一極支配とも言われてきた。

 一方、オバマ大統領は「米国はもはや世界の警察官ではない」との発言に象徴されるように、世界の新たな脅威に積極的に対応してこなかった。米国はそれだけのパワーがあるにもかかわらず、それを行使しないと意思表明したも同然である。各国との協調に基づいて国際問題を解決すると言えば聞こえはいいが、優柔不断な対応が目立つ。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「オバマ氏は方向転換し、本格的な安全保障チームを編成する必要がある」ことを強調。「大統領自身が変化すべき」と結んでいる。

 指導的立場を行動で示せ

 軍事行動だけで世界の脅威に対処できるものではない。ただ、世界の指導的な立場にある米国は、それを行動で示さなければならない。オバマ大統領はこの点を自覚すべきである。

(11月28日付社説)