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最終ゴールは「平等法案」 過激イデオロギーが「国教」に


アメリカLGBT事情(8)

2月25日、「平等法案」の成立を訴えるペロシ下院議長(左)、シューマー上院院内総務(右)ら米民主党指導部(UPI)

2月25日、「平等法案」の成立を訴えるペロシ下院議長(左)、シューマー上院院内総務(右)ら米民主党指導部(UPI)

 米国では2015年の連邦最高裁判決により、全米50州で同性婚が合法化された。LGBT活動家たちにとって悲願が成就した瞬間だったが、これが「最終ゴール」ではなかった。
 最終ゴールとは、性的指向・性自認を理由とするあらゆる差別を非合法化することだ。現代の米国では人種や性別に基づく差別がタブーであるように、同性愛や性転換について異論を挟むことさえ許さない社会の実現を目指している。

 具体的には、雇用、教育、住宅、サービスなど幅広い分野で、性的指向・性自認に基づく差別を連邦レベルで禁止する、通称「平等法案」を成立させることである。1964年制定の公民権法で人種、肌の色、性別、宗教、出身国を理由とする差別を禁じたが、平等法案は性的指向と性自認も差別禁止の対象として加えるというものだ。

 公民権法は、マーティン・ルーサー・キング牧師らが黒人差別撤廃を訴えた公民権運動の高まりを受けて制定され、人種差別をタブーとする社会へと変わる歴史的分岐点となった。それだけに平等法案が社会にもたらす影響は大きく、LGBT活動家たちが同法案を「現代の公民権運動」と呼ぶのはそのためだ。

 バイデン大統領を筆頭に民主党が積極的に推進する平等法案は、同党が過半数を握る下院で既に可決している。ただ、上院では共和党の抵抗で可決の目処(めど)は立っていない。

 仮に平等法案が成立した場合、どのようなことが起きるのか。トランスジェンダー女性によるトイレ、更衣室、刑務所などの女性専用施設利用や女子スポーツ参加を禁じることが不可能になる。本連載で紹介してきたような混乱の事例を、誰も逆らえない現実として受け入れなければならなくなるのである。

 また、ゲイカップルの結婚式のフラワーアレンジメントを断っただけで泥沼の裁判に引きずり込まれた「花屋のおばあちゃん」のように、異なる見解を持つ個人や事業者を標的にした訴訟が乱発することが予想される。

 平等法案を支持する勢力は、性的指向・性自認も人種と同じように「生まれつき」「変わらない」と主張するが、これは学問的に否定されている。ユタ大学のリサ・ダイアモンド教授は、同性愛者の性的指向が頻繁に変わることを示すさまざまな調査データを挙げ、「同性愛指向を一様に変わらない特性と捉えることは科学的に不正確だ」と断言している。

 定義が曖昧である上、不変ではない性的指向・性自認を、法律で人種と同列に位置付けることは明らかに行き過ぎであり、危険ですらある。米有力保守派団体「家庭調査協議会」のマリー・ベス・ウォデル連邦問題・家庭・宗教自由担当部長は、平等法案を「不平等法案」と呼び、次のように批判している。

 「差別を禁止することは称賛に値する目標だが、この法案が実際にもたらす影響は、差別の撤廃ではなく、思想・信仰の自由や異なる意見を消し去ることだ。性倫理に関する特定イデオロギーの受け入れを要求することで、政府が不平等、不公平を押し付けるのが平等法案だ」

 ウォデル氏が言うように、平等法案の成立を目指す勢力は、表向き人権擁護や差別撤廃を訴えるが、本当の狙いは、過激なLGBTイデオロギーを法律に組み込むことで、異論を完全に排除することにある。

 米国では既に、同性愛をめぐるキリスト教の性倫理は「偏見」とみなされる状況が生まれている。平等法案が成立すれば、過激なLGBTイデオロギーが事実上の「国教」となり、米社会の在り方は劇的に変容することになる。

(編集委員・早川俊行)


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