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蹂躙される女子スポーツ 夢を奪う不公平な競争


アメリカLGBT事情(3)

 東京五輪では、女子重量挙げのニュージーランド代表ローレル・ハバード選手が、性別変更を公表したトランスジェンダー女性として史上初めて五輪に出場したことが大きな話題を集めた。大手メディアは五輪が重視する「包括性」「多様性」の象徴ともてはやしたが、見落とされている“不都合な真実”がある。

2020年2月12日、米コネティカット州の高校スポーツ統括組織を相手取って訴訟を起こしたチェルシー・ミッチェルさん(自由防衛同盟提供)

2020年2月12日、米コネティカット州の高校スポーツ統括組織を相手取って訴訟を起こしたチェルシー・ミッチェルさん(自由防衛同盟提供)

 それはハバード選手が出たことで、出場権を逃した別の女性選手がいることだ。国際オリンピック委員会(IOC)がトランス女性の出場を認めた結果、不公平な競争によって五輪出場の夢が奪われ、涙を流した女性選手がいるのである。女性から機会を奪うことが本当に「包括性」と呼べるのだろうか。

 「(ハバード選手の出場は)公正さを示すストーリーではない。不公正さを示すストーリーだ」

 英誌エコノミスト(電子版)への寄稿で、IOCの方針を批判したのは、米国の女子大学生チェルシー・ミッチェルさんだ。ミッチェルさんがトランス女性の女子種目参加に強く反対するのは、自ら悔し涙を何度も流してきたからだ。

 ミッチェルさんは高校時代、東部コネティカット州で最速の女子陸上短距離選手だった。だが、2017年からの3シーズンは、体は男である2人のトランス女子選手が州の女子陸上タイトルを15個も独占。ミッチェルさんは州の決勝でこの2人に4度も敗れた。

 ミッチェルさんはUSAトゥデー紙に寄せた手記で、トランス女子選手に打ち負かされるたびに、「女性としての自信や自分の能力を信じる気持ちが崩れていった」と述べている。優勝の栄誉を奪われたミッチェルさん以外にも、次の大会に進出する機会を逃した女子選手が80人以上いる。

 「レースが始まる前から結果は分かっていた。これは本当に辛(つら)かった」

 こう語るセリーナ・ソウルさんも、次の大会への進出を阻まれた一人だ。東部ニューイングランド地区大会に進出するには、州の大会で6位以内に入らなければならなかったが、結果は8位。2人のトランス女子選手に弾(はじ)き出された格好だ。これにより、ソウルさんはスポーツ奨学金を得て大学に進学するチャンスも失った。

 だが、バイデン米政権は、女子アスリートたちが受ける「逆差別」には無関心だ。バイデン大統領は就任初日に出した大統領令で、女と自認する男子生徒の女子スポーツ参加を教育現場に認めさせていく方針を明らかにした。

 だが、ギャラップ社が今年5月に公表した世論調査結果によると、トランス女性の女子スポーツ参加に賛成する人は34%にとどまり、反対は62%に上った。バイデン政権の方針とは裏腹に、国民の3分の2近くは極端なトランスジェンダー擁護を望んでいないのだ。

 保守的な州では、トランス女性の女子種目参加を禁じる動きが広がっており、テキサス州やフロリダ州など9州が禁止する法律を制定した。

 ミッチェルさん、ソウルさんら4人の女子アスリートは、コネティカット州の高校スポーツ統括組織に対して訴訟を起こしている。中傷や嫌がらせを受けながらも法廷闘争を続ける4人は、全世界の女子アスリートを代表していると言っても過言ではない。米国の司法がトランス女性の女子競技参加は女性差別に当たるとの判断を示せば、国内外に甚大な影響をもたらすと予想されるからだ。

 陸上のレースではトランス女子選手に何度も打ち負かされたミッチェルさんだが、手記では裁判について次のように記している。

 「今度は私たちが勝利すると確信している」

(編集委員・早川俊行)


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