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性被害者の悲痛な叫び 無視される女性の安全


アメリカLGBT事情(2)

米カリフォルニア州サンペドロにある連邦刑務所(UPI)

 トランスジェンダー女性による女性専用施設の利用を認める動きを怯(おび)える眼差(まなざ)しで見詰めているのが、実際に男性から性暴力を受けた辛(つら)い過去を持つ女性たちだ。

 「この世には女性や子供たちに近づく手段として、トランスジェンダーのふりをする変質者が無数にいる。多くの弱い人々の身体的安全よりも、少数の感情的安らぎを優先する政策を導入するのは、無関心にも程がある」

 2015年に米ネットメディアへの寄稿でこう訴えたのは、幼い頃、家族に近い人物から性的虐待を受けた経験を持つケイリー・トリラーさんだ。トリラーさんは、このままでは自分と同じ性被害者を増やすことになると憂慮し、勇気を出して抗議の声を上げた。

 だが、米社会はトリラーさんら性被害者の悲痛な叫びを無視するかのように、女性の安全よりもトランスジェンダーの権利を優先する方向に突き進んでいる。

 例えば、西部カリフォルニア州では今年1月、トランスジェンダーの受刑者が自認する性別の刑務所に入所することを認める法律が施行された。性別適合手術を受けていない、つまり男性器がついている者でも、本人が自分は女性だと言えば、女性刑務所への移管を認めるというのである。

 英国では、17年に「カレン・ホワイト」と名乗る男がトランス女性として女性刑務所に送られ、わずか3カ月の間に2人の女性受刑者に性的暴行するというショッキングな事件が起きている。カリフォルニア州でも第2、第3の「カレン・ホワイト事件」が起きることは時間の問題だ。

 実際、トランス女性が移管された女性刑務所では、コンドームや緊急避妊薬が配布された。これは女性受刑者がトランス女性にレイプされるのは避けられないと、州当局が認めているに等しい。ロサンゼルス・タイムズ紙は、「妊婦用監房のような施設が必要になる」と懸念する女性刑務所職員の声を伝えている。

 米国では女性受刑者の大半が過去に性的暴行を受けた経験があるというデータもある。こうしたトラウマを抱える女性たちにとって、体は男である囚人と同じ監房に閉じ込められることは悪夢に他ならない。

 女性刑務所へのトランス女性収監に反対する左翼フェミニスト団体「女性解放戦線」の元には、女性受刑者から恐怖や怒りを訴える手紙やメッセージが何百通と届いているという。米国では行き過ぎたトランスジェンダー擁護の動きが女性の権利や安全を脅かしていることから、フェミニスト団体が保守派と共闘する状況が生まれている。

 カリフォルニア州と同様の法律を制定している西部ワシントン州では、連続女性殺人犯や12歳の少女をレイプした犯罪者が女性刑務所に移された。凶悪犯やレイプ魔と同じ空間で眠ることは、女性にとってどれほどの恐怖だろうか。

 バイデン大統領は就任初日の今年1月20日に、連邦政府機関に性的少数者(LGBT)差別禁止を徹底させる大統領令を出した。これに従い、連邦政府の刑務所もトランス女性の女性刑務所収監を積極的に推進する可能性があり、懸念が強まっている。

 「全ての人を満足させられる方法はない」。前述の性被害者トリラーさんは、ルールが悪用されるリスクがある限り、女性の安全を確保することとトランス女性に女性施設利用を認めることは両立しないと言い切る。

 トリラーさんは「優先すべきは全ての人の安全を守ることだ」と述べ、女性の安全を最優先で考えてほしいと痛切な叫び声を上げている。

(編集委員・早川俊行)


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