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アルツハイマー薬 家族の負担を軽減したい


 製薬大手エーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「アデュカヌマブ」が米国で承認された。

 認知症は家族による介護の労力と費用の負担が重く、治療薬の登場でこうした負担の軽減が期待される。

 原因物質に直接作用

 認知症は世界全体の課題となっている。各国で高齢化が進む中、認知症患者は2050年に1億5000万人に上ると推計されている。

 アデュカヌマブは、脳内に蓄積して原因物質になるとされるたんぱく質「アミロイドβ(ベータ)」を除去し、早期アルツハイマー病の症状進行を抑えるとされるのが特長だ。原因物質に直接作用する治療薬の承認は世界で初めてとなる。

 これまでは進行を一時的に遅らせる薬しかなく、効果も1年ほどしか続かなかった。根本的な治療薬が開発されたことは喜ばしい限りだ。

 アミロイドβは健康な人の脳内にもあり、通常は短期間で排出される。ところが何らかの原因で脳内に蓄積するようになると神経細胞を殺し、思考や記憶など認知機能の低下が進む。

 アデュカヌマブは、認知機能障害がない高齢者のリンパ球から作った抗体医薬品だ。静脈に点滴投与された後、アミロイドβに結合して取り除く仕組みとなっている。認知症が進行した患者では、多くの神経細胞が死滅しており、原因物質を除去しても元に戻らない。このため、神経細胞の損傷がまだ少ない早期患者や発症前の人を対象に開発した。

 米国では既に医療現場で使われている。米国でのアデュカヌマブの価格は年間5万6000㌦(約617万円)に上る。

 もっとも、米食品医薬品局(FDA)による承認には異論も出ている。専門家でつくるFDAの諮問委員会は昨年11月、2種類の後期治験が矛盾する結果となったことを踏まえ、アデュカヌマブの有効性が証明されていないと指摘していた。このためFDAは、今後追加で行う治験で意図した効果を示せなければ、承認を取り消す可能性もあるとくぎを刺した。

 一方、厚生労働省によると、日本国内には65歳以上の認知症の人が約600万人おり、うち6~7割がアルツハイマー病の患者と推計される。エーザイなどの試算では、アルツハイマー病にかかる費用は18年時点で12兆円を超え、半分以上が家族介護による負担だ。

 アデュカヌマブは昨年12月に日本でも新薬として申請され、現在は有効性や安全性について審査が進んでいる。米国での承認が日本での判断に影響を与えることも考えられる。実際に使われるようになれば、医療費の膨張で国の財政負担が増す恐れはあるが、家族の介護費用を大きく減らせるだろう。

 価格引き下げに努めよ

 ただ、高額な治療薬を効果のありそうな患者全員に使うことはできない。

 できるだけ多くの患者が恩恵に浴することができるよう、介護コストをどれだけ節約できるか試算した上で、価格引き下げに努める必要がある。