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米で異常気象相次ぐ


規制で石油産業には逆風

 米国では昨年、ハリケーンが記録的に多く、命名されたハリケーンが過去最多となる30個も発生したほか、カリフォルニア州では8月から秋にかけて、過去18年で最も深刻な山火事が続くなど、異常気象が相次いだ。

米コロラド州東部のロッキー山脈近辺にあるフラッキングによる石油採掘施設。大量の水を使い高圧力で地下を掘削する(UPI)

米コロラド州東部のロッキー山脈近辺にあるフラッキングによる石油採掘施設。大量の水を使い高圧力で地下を掘削する(UPI)

 こうした森林火災やハリケーンの増加について、科学者は気候変動との関連を指摘している。近年、全米で被害が顕著になっていることから、懸念が高まっており、ピュー・リサーチセンターによる昨年6月の世論調査では、65%の米国人が連邦政府は気候変動の影響を緩和する努力が不十分であると回答した。

 こうした追い風を受けるとの観測から、電気自動車や再生可能エネルギー、水素電力、蓄電池などの成長見通しが拡大している。昨年11月の米大統領選前からすでに、特に電気自動車メーカー、テスラなど環境関係の株価が上昇していた。

 逆に環境規制の強化により、石油・ガス産業には逆風となる懸念がある。特に、米国にシェール革命をもたらした画期的な採掘技術である水圧破砕法(フラッキング)を禁止する動きに出る可能性があることが大きな不安材料となっている。

 この採掘法は、地下水の汚染につながるなどとして左派の間で禁止を求める声が強い。民主党のバイデン前副大統領は選挙戦期間中、「フラッキングを拡大しない」「化石燃料を終わらせる」などと発言していることから、規制強化に動くことが考えられる。

 しかし、米国はこの採掘法により国内生産が拡大することで、海外からの石油・天然ガス輸入の依存度が低下し、世界の原油市場から影響を受けにくくなっている。また米国での生産拡大により石油価格が下落することで、ロシアのプーチン大統領やベネズエラのマドゥロ大統領のような産油国の独裁者の影響力を削ぐこともできた。

 左派の政策に引きずられ、規制が与える地政学的な影響を軽視すれば、かえって世界情勢の不安定化につながるリスクがある。

(ワシントン・山崎洋介)